東北地方太平洋地震後の改善の議論と2013年改正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 21:40 UTC 版)
「津波警報」の記事における「東北地方太平洋地震後の改善の議論と2013年改正」の解説
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、実際に観測した津波の高さが、津波警報で予測した津波の高さを大きく上回る事態となった。その原因について気象庁は、「国内のほとんどの広帯域地震計が振り切れたためCMT解を計算できなかったこと」「迅速に地震の規模や震源域の広がりが推定できる手法を開発していたものの東北地方太平洋沖地震の発生に間に合わなかったこと」を挙げている。このことから気象庁は、M8を超える巨大地震と判断できるときには、当該海域で想定される最大マグニチュードの値に基づいて大津波警報や高さ予想を出すと発表した。 具体的には、M8に近い規模までの地震については、予想される津波の高さ予測を「細分化されすぎ」ていた8段階から、予測誤差を考慮した防災対応とリンクさせやすい5段階程度に変更し、M8を超える巨大地震と判断できるときには過小評価のおそれがあることから数値として発表するのではなく、定性的な(具体的な高さを明示しない)「巨大な津波のおそれ」と一般的表現としたり、東北地方太平洋沖地震も含め過去の津波被害を引用するなど、津波警報発表地域の住民に災害が具体的にイメージできるような表現とすることを検討していた。また、「津波観測情報」における第一波観測の情報についても、巨大地震になれば最大波は第一波の10倍以上に匹敵するおそれもあるため、避難行動に抑制がかからないような内容で発表することを検討していた。 これらの検討を踏まえて2013年3月7日正午をもって従来の津波警報は改正されることとなった。 従来は「津波警報(津波)」と「津波警報(大津波)」の2種類に区分され、気象庁の会見などでの記者発表や説明及び津波警報発表時の気象庁ホームページ「津波警報・注意報、津波情報、津波予報」では「津波の津波警報」や「大津波の津波警報」と発言・記載されていた。しかし、これらの「津波の津波警報」や「大津波の津波警報」などといった呼び方ではかえって聞き手(報道を伝えられる側)に分かりにくくなるため、報道機関では「津波警報(津波)」の場合は単に津波警報、「津波警報(大津波)」の場合は大津波警報と区別して報道されており、一般にも「津波警報(大津波)」は「大津波警報」と呼ばれていた。東北地方太平洋沖地震後の津波警報改善の検討の中で、従来の区分に対しては分かりにくいという指摘があり、2013年3月7日から気象庁も正式名称として「大津波警報」に変更することとなった。 従来の区分では高いところで2 m程度の津波が予測される場合に発表する「津波警報(津波)」(発表される津波の高さ は1 m、2 m)と高いところで3 m程度以上の津波が予測される場合に発表する「津波警報(大津波)」(発表される津波の高さは3 m、4 m、6 m、8 m、10 m以上)としていたが、高さの区分を8段階から5段階に集約し、マグニチュード8超の巨大地震で地震規模がすぐに推定できない場合には、正確な地震規模がわかるまで大津波警報の沿岸では「巨大」、津波警報の沿岸では「高い」とし、迅速な避難を促す表現を示すこととなった。 津波観測に関する情報について、大津波警報の沿岸で1 m、津波警報の沿岸で20 cmをそれぞれ超えない場合には、これが最大であるとの誤解を避けるために数値を公表せず「観測中」と発表することとなった。 津波観測に関する情報について、海底津波計やGPS波浪計によって沖合の津波の観測データを監視し、これに基づいて沿岸での推定値を発表することとなった。
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