東北地方太平洋沖で過去に発生した地震とアスペリティモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:07 UTC 版)
「東北地方太平洋沖地震及び津波のメカニズム」の記事における「東北地方太平洋沖で過去に発生した地震とアスペリティモデル」の解説
東北地方の太平洋沖では、これまでマグニチュード7クラスの地震が繰り返し発生していることが知られていた。例えば宮城県沖では1793年以降、マグニチュード7-8クラスの地震が30年-40年あまりの間隔で繰り返し発生しており、宮城県沖地震は前回は1978年に発生していたため、次回の宮城県沖地震の発生が切迫しているものと考えられていた。また宮城県沖地震のように繰り返し発生する地震の存在や、地震波の解析によって明らかとなった地震時の断層面すべりが大きな場所があることなどから、プレート間の固着が強く、地震発生時のすべりが大きいアスペリティと呼ばれる場所があることがわかってきた。 そして同一の場所で繰り返される地震は、アスペリティが単独または隣接するアスペリティを巻き込んで複数同時に動くことによって発生すると考えられるようになった。例えば東北地方太平洋沖では、1968年に発生した十勝沖地震で破壊された二つのアスペリティのうち、南側は1931年、1994年にも破壊されたと考えられた。先述した宮城県沖地震では、1933年、1936年、1937年に相次いで発生したマグニチュード7クラスの地震でそれぞれ破壊されたアスペリティ全体が1978年の宮城県沖地震で破壊されたと考えられ、2005年に発生した地震によって1936年の地震とほぼ同一のアスペリティが破壊されたと見られるが、まだ破壊されていないアスペリティが残っているものと考えられた。そして時には1793年に発生したM8.2と推定される地震のように、日本海溝沿いのアスペリティも連動することにより、より大きな地震が発生する可能性もあるとされた。つまり例えば宮城県沖地震を例に挙げれば、約30-40年の間隔で同一地域の複数のアスペリティがある時は単独で、またある時は連動して破壊される地震活動を繰り返していると判断された。 しかしこのような東北地方太平洋沖の地震活動についての解釈について、疑問の声がなかったわけではない。例えばひとくちに宮城県沖地震と言ってもアスペリティの破壊状況は様々であり、将来起こるであろう宮城県沖地震が既知のアスペリティモデルに合致している保証はないのではないかとの意見が出された。また宮城県沖地震によって開放されると考えられる太平洋プレート沈み込みに伴うひずみは、全てのひずみの約四分の一程度と試算されており、宮城県沖より南の福島県沖、茨城県沖には過去に巨大地震の発生が確認されていない地域が広がっており、それらの地域にも太平洋プレート沈み込みに伴うひずみの蓄積が想定されていた。つまりひずみの蓄積と地震によるひずみの解消との間に矛盾が見られ、その矛盾の解釈をめぐっては、プレート間に非地震性のすべりが生じているという考え方とともに、巨大地震によってひずみの解消がなされるとの可能性も指摘されていた。しかしこれまで東北地方太平洋沖の日本海溝でマグニチュード9クラスのプレート間地震の発生が知られていなかったこともあり、巨大地震の発生の可能性についての議論は深まらなかった。
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