木造倶利迦羅竜剣
主名称: | 木造倶利迦羅竜剣 |
指定番号: | 3520 |
枝番: | 0 |
指定年月日: | 2004.06.08(平成16.06.08) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 彫刻 |
ト書: | |
員数: | 1基 |
時代区分: | 平安 |
年代: | |
検索年代: | |
解説文: | 正面を向き左後肢で立ち、両前肢、右後肢で剣を掴み、剣先から呑み込もうとする勢いの竜をあらわす倶利迦羅竜剣である。竜は顔を正面に向け、両耳を後方に伏せ、たてがみをあらわし、嗔目、開口、上歯牙を出し、唇後方に髭をあらわす。頸部に帯を付けるのは上方に宝珠を付けたか。頸部は弧を描いて体部を刀身に沿わせ、両前肢を屈臂して剣上方を掴み(指は五指)、右後肢も屈臂して剣下方を掴み(指は四指)、体部を緩くくねらせながら、左後肢を伸ばして、台座(岩座か)上に立つ。両前肢付け根から翼、背面に背鰭を付け、尾を台座まで垂らす。額部に角があったか。体部に鱗を(現状、頭部に墨描)描く。 構造は、カヤと思われる針葉樹材を用いて頸部で上下二材(頭部から頸部一材、剣身および四肢を含んで頸部から台座〈岩座〉まで別材)を矧ぐ。ともに内刳りはない。角、鼻先、上顎先、下顎(以上亡失)、眼(黒眼部分は別材、〓接ぎとなる)、両牙、両前肢先付け根から出る翼、尾先(以上三件亡失)、剣の柄(後補)を矧ぐ。頸部上下材の間にマチ材を挟む。台座は本体と共木である。 古代中国の竜は、顔が長く頭部に角と口辺に長い髭をもち、胴が大蛇のように長く、鱗に覆われ、さらに背より尾にかけて鰭があり、四足を有するとされる。『説矩里迦龍王像法』等の仏教経典では、角は一角で頸に蓮華、宝珠を付けるとされるので、本像の場合、欠失部等があるが、古代中国における竜の基本的属性を備えながら、仏教的竜の要素とを合わせたものである。 このような形状のものは『尊勝悉地法』に、不動明王の変成身の倶利迦羅竜として、阿字より転じて剣→不動→竜へと変じるさまを観想する道場観の過程を説いているが、一方、倶利迦羅竜の形姿について記す『説矩里迦龍王像法』は、壇上に剣を安置し竜王を勧請して降雨や除病の修法を説く。絵画や工芸品にみられる倶利迦羅竜はほとんどが剣身に巻き付いているが、本像は巻き付かないという点が異例で、絵画作品のように道場観で説かれる倶利迦羅竜とは異なる祈雨などの修法の本尊という推測の可能性もある。 小武寺は空也開基と伝える。薬師堂の本尊像は一二世紀に遡り、本像は護摩堂(今亡)に安置されていたとされる。倶利迦羅竜の彫刻作品はほとんどないが、広島・厳島神社の平家納経経函(国宝)に施された竜、岩手・極楽寺の竜頭、熱田神宮の〓太鼓の竜などの平安時代後期の諸作に近い。簡潔直截的な彫法が特徴であり、製作年代は平安時代後期も早いころに求められる。 |
彫刻: | 木造伝観音菩薩立像 木造伝阿弥陀如来及脇侍坐像 木造俊乗上人坐像 木造倶利迦羅竜剣 木造倶生神坐像 木造倶生神立像 木造傅大士及二童子像 |
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