日本の所得ジニ係数の推移
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 08:23 UTC 版)
「ジニ係数」の記事における「日本の所得ジニ係数の推移」の解説
右図は、厚生労働省の平成29年度と平成17年度の所得再分配調査の結果から計算したジニ係数の1993 - 2017年までの推移である。それぞれ 紫線は「直接税、社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数 緑線は「直接税、社会保障給付金」の再分配を考慮した所得のジニ係数 赤線は「社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数 青線は当初所得のジニ係数 を示しており、以下の下表のようになっている。また、世帯人員数を考慮に入れた補正を行っている。 1993年以降の等価所得(世帯人員数を考慮に入れて補正した所得)の再分配前(等価当初所得)と社会保障と税による改善後のそれぞれの等価所得のジニ係数推移調査年等価当初所得①①+社会保障給付金-社会保険料②等価可処分所得(②-税金)③等価再分配所得(③+現物給付)④再分配による改善度社会保障による改善度税による改善度1993 0.3703 0.3313 0.3097 0.3074 17.0% 11.2% 6.5% 1996 0.3764 0.3273 0.3119 0.3096 17.7% 13.7% 4.7% 1999 0.4075 0.3501 0.3372 0.3326 18.4% 15.3% 3.7% 2002 0.4194 0.3371 0.3227 0.3217 23.3% 19.9% 4.3% 2005 0.4354 0.3355 0.3218 0.3225 25.9% 22.8% 4.1% 2008 0.4539 0.3429 0.3268 0.3192 29.7% 26.2% 4.7% 2011 0.4703 0.3418 0.3219 0.3162 32.8% 28.6% 5.8% 2014 0.4822 0.3354 0.3159 0.3083 36.1% 32.1% 5.8% 2017 0.4795 0.3398 0.3194 0.3119 35.0% 30.8% 6.0% 右図は、1962年以降の再分配前後のジニ係数を同じく所得再分配調査によってあらわしたものである。表は、下のようになっている。 1962~2017年までの所得再分配調査によるジニ係数推移調査年当初所得①社会保障による再分配所得(①+医療費+社会保障給付金-社会保険料)税による再分配所得(①-税金)再分配所得(社会保障と税金の効果合算)再分配による改善度(%)当初所得に対する社会保障による改善度(%)当初所得に対する税による改善度(%)1962 0.3904 - - 0.3442 11.8 - - 1967 0.3749 0.3423 0.3611 0.3176 15.3 8.7 3.7 1972 0.3538 0.3338 0.3384 0.3136 11.4 5.7 4.4 1975 0.3747 0.3577 0.3638 0.3455 7.8 4.5 2.9 1978 0.3652 0.3608 0.3517 0.3381 7.4 1.2 3.7 1981 0.3491 0.3317 0.3301 0.3143 10.0 5.0 5.4 1984 0.3975 0.3584 0.3824 0.3426 13.8 9.8 3.8 1987 0.4039 0.3564 0.3879 0.3382 16.3 11.8 4.0 1990 0.4334 0.3791 0.4207 0.3643 15.9 12.5 2.9 調査年当初所得①①+社会保障給付金-社会保険料②可処分所得(②-税金)③再分配所得(③+現物給付)④再分配による改善度(%)社会保障による改善度(%)税による改善度(%)1993 0.4394 0.3887 0.3693 0.3645 17.0 12.7 5.0 1996 0.4412 0.3798 0.3660 0.3606 18.3 15.2 3.6 1999 0.4720 0.4001 0.3884 0.3814 19.2 16.8 2.9 2002 0.4983 0.3989 0.3854 0.3812 23.5 20.8 3.4 2005 0.5263 0.4059 0.3930 0.3873 26.4 22.8 4.1 2008 0.5318 0.4023 0.3873 0.3758 29.3 26.6 3.7 2011 0.5536 0.4067 0.3885 0.3791 31.5 28.3 4.5 2014 0.5704 0.4057 0.3873 0.3759 34.1 31.0 4.5 2017 0.5594 0.4017 0.3822 0.3721 33.5 30.8 6.0 なお、この所得再配分調査は、当初所得に老齢年金が含まれていないため、他の調査よりもジニ係数が高くなる。老齢年金を計算に入れた、国民生活基礎調査の結果に基づいて計算すると、ジニ係数は0.1ほど小さくなる。また、単身者世帯を調査対象に含まない全国消費実態調査に基づいて計算したジニ係数は、0.2ほど小さくなる。このように、ジニ係数は所得の定義や世帯人員数への依存度が大きいので注意が必要である。 上記、所得再分配調査の結果に寄れば、日本のジニ係数は、当初の高齢化によるとされる急激な上昇分を、社会保障の再分配によってほとんど吸収しているが、充分ではなく、日本の租税による富の再分配機能が弱まっているために、ジニ係数の上昇を早めている。原因として、中間所得層に対する税率が、経済協力開発機構(OECD)各国に比べて低すぎること、若年労働層に対する社会保障が、老人に比べると少ないことが明らかにされ、養育に対する財政支援も少ない事で、子育て世帯の貧困率を高めている可能性があることが指摘されている。 2008年の経済協力開発機構レポートと慶応義塾大学の石井加代子によれば、日本のジニ指数は1980年代より毎年上昇していた。しかし、2000年に入ると、格差拡大は頭打ちとなったが、全体的に所得が低下してきている。そして、日本の貧困レベルは、2015年でOECD諸国の中では、平均より高く9番目に高いと指摘している。 厚生労働省が調査したところによると、2011年の所得再分配前のジニ係数は0.5536であったが、所得再分配後のジニ係数は0.3791となっている。0.5~0.6は「慢性的暴動が起こりやすいレベル」と言われ、社会騒乱多発の警戒ラインとされる0.4を所得再配分前の状態では上回っているが、税金などによる所得再配分機能により0.3791に抑えられており日本の所得の偏在は一定の秩序を保っているといえる。 2019年9月6日、厚生労働省はジニ係数が、2017年調査で所得再分配前のジニ係数は0.5594であり、分配後は0 .3721であった。
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