文学における起源と発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 00:26 UTC 版)
「バーレスク」の記事における「文学における起源と発展」の解説
16世紀のはじめ、バーレスクという言葉はフランチェスコ・ベルニの『Opere burlesche 』のタイトルにおいて初めて登場した。この作品は印刷技術のまだなかった当時にあって、写本によって広く読まれた。それからしばらく、バーレスク形式の詩は、彼の名をとってpoesie bernesca と呼ばれたほどである。荘厳であったり哀れを誘う作品をグロテスクに模倣するものとしての「バーレスク」という文学用語は17世紀のイタリアおよびフランス、次いでイギリスにおいて普及するようになった。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』における ピュラモスとティズベーの劇中劇や騎士道ロマンスを風刺したフランシス・ボーモントの『きらめくスリコギ団の騎士』などはこの種のパロディの最初期の例といえる。 17世紀のスペインでは、風刺的な作品をいくつも書いたセルバンテスの劇作と詩が中世的なロマンスを笑いのめした。1615年には彼の『模範小説集』と『新作コメディア八篇と幕間劇八編』が出版されている。バーレスクという用語はそれ以前のチョーサーやシェイクスピア、古代ギリシャ・ローマ文化における古典にも用いられている。 バーレスクは意図的にばかげた作品として書かれている。その作中においては様々な作風が模倣され、特定の作者の模倣と不条理な描写とが結びついている。この意味で、バーレスクという言葉はパスティーシュやパロディと言い換えられることも多く、あるいは17世紀から18世紀にかけて流行したジャンルである「擬英雄詩」的ということもできる。バーレスクが目指す効果は読み手(あるいは聞き手)がそのテーマに対して持っている知識に依存しており、読み手には高い教養が求められる。 17世紀および18世紀のバーレスクは以下の2つのタイプに分けられる。すなわち高位のバーレスク(High burlesque)における模倣とは、学者然として高尚な文でそれにふさわしくない陳腐であったり滑稽な主題が描かれることであり、例えばパロディ文学や擬英雄詩がそれにあたる。ハイ・バーレスクの例として最もよく引用されるのが、アレクサンダー・ポープの『髪盗人』である 。低位のバーレスク(Low burlesque)は、真面目な主題を不遜で嘲笑的な文体で描くものである。例えば、サミュエル・バトラーの『ヒューディブラス』である。この作品では、ピューリタンの騎士の災難が風刺的な滑稽詩の形式で、しかも日常的な語彙によって描かれる。バトラーが自身の滑稽詩に持たせた倫理的な文脈が、カリカチュアを風刺に変えたのである。 時代が下っても、バーレスクの文学的本質はレヴューやスケッチにおいてみることができる 。トム・ストッパードの1974年の戯曲『戯れ言』は、バーレスクの伝統にのっとって描かれる長編劇の一例である。
※この「文学における起源と発展」の解説は、「バーレスク」の解説の一部です。
「文学における起源と発展」を含む「バーレスク」の記事については、「バーレスク」の概要を参照ください。
- 文学における起源と発展のページへのリンク