文学における贋作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 03:34 UTC 版)
ヨーロッパでは活版印刷が行われるようになった近世には既に、フランソワ・ラブレーやセルバンテスなどの人気作家に肖って、彼らの作品に便乗した偽物が出されていた。こうした偽物は同時代に出されたために来歴の主張に乏しいこともあってか、「偽書」よりも「贋作」と呼ばれるのが一般的である。こうした贋作は文体や語彙の齟齬から比較的容易に見抜かれてしまうものだが、中には『ガルガンチュワとパンタグリュエル』の「第五之書」のように、現在でもなお完全な決着をみていない例もある。 こうした贋造は無関係な人物による執筆の場合に問題となるのであって、縁のある人物が一部を加筆するといったケースなどは、普通贋作や偽書とは呼ばない。『源氏物語』は一部の巻が紫式部以外による執筆を疑われているものの、こうした場合は贋作とは呼ばないのが常である、シャーロック・ホームズシリーズの『指名手配の男』のような変則的なケースもある。 また、名義をはじめとする著者の属性に虚偽を含もうと、同一人物によって書かれたと見なされていれば、普通贋作や偽書などとは呼ばれない。例えば、シェークスピアは古くから別人説も唱えられているが、そうした立場からでも、偽書と呼ぶことはない(ウィリアム・ヘンリー・アイアランドの『ヴォーティガンとロウィーナ』のような作品はシェイクスピアの贋作と見なされる)。文学の場合、大きく時代を遡れば、アイソポス(イソップ)やホメロスなど著者の同一性自体が揺らいでいても偽書・贋作論議の埒外に置かれているケースもある。 ガルガンチュワとパンタグリュエルの「第五之書」「第六之書」 ノストラダムス『百詩篇集』第二序文及び第八巻以降ならびに『六行詩集』 『グヅラ、あるいはダルマチア、ボスニア、クロアチア、ヘルツェゴヴィナにて採取されたる、イリリア叙情詞華選』(ビンセント・アグラノヴィッチ、実はプロスペル・メリメ)
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