改造が行われる背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 15:34 UTC 版)
内閣改造は通常、新内閣発足後1年ほど経過したときに、国務大臣の相当数を一度に入れ替えないしその担当を替える(横滑りさせる)ことが多い。 内閣改造が行われる背景としては次の3点が挙げられる。 第一に、内閣総理大臣が国務大臣任免権を行使することにより、そのリーダーシップを維持拡大し、政権基盤強化を図るためである。内閣総理大臣がより適当と考える人材を登用し、あるいは適所に配置換えし、後継者を重要ポストで処遇し、与党内のライバルを閣内に取り込んで反対行動を封じるなど、内閣の行政遂行能力を向上させるとともに、人事によって自らの政治力を高めることを目的とする。 第二に、閣僚が同じ人物のままではマスコミを通じて国民からマンネリ感を持たれて社会に閉塞感が漂っている場合は、内閣改造を表明することで、どの与党議員が閣僚入りをするかなどをマスコミに予想させるなどして内閣への国民的注目を高めることで内閣を刷新し、フレッシュな感覚を国民にアピールすることを目的とする。その結果、内閣改造すると、改造直後の内閣支持率が改造前より上昇する傾向がある。 第三に、自由民主党の長期政権下では内閣改造およびそれとあわせて行われる幹事長など党役員の交替は定期人事異動的な色彩が強く、慣習により漫然と行われてきた。ある程度当選回数を重ねた国会議員は、特に精通した政策分野などと関わりなく、とにかく大臣に任命されることを切望する、いわゆる大臣病にかかる。この大臣病患者たちの不満に応えるため、自民党の各派閥は、改任の必要がないにも関わらず、組閣から1年ほど経過したあたりで大臣の顔触れを変えることを要求しはじめ、内閣総理大臣も派閥の支持を得るためにこれを受け容れ、時機をみて改造を行うことが慣習となった。もともと替える必要性が低いため、適材を適所に配置するという気概は薄れ、派閥が当選回数順に推薦した人物を漫然とはめ込む派閥順送り人事が横行した。このことはまた、大臣・内閣の官僚に対する指揮・管理機能が形骸化し(「重要なことですので政府委員から答弁します」と国会で発言した閣僚すらいた)、官僚機構の政治に対する自立性が強いという状態をもたらしたともいえる。このような順送り人事に対する批判は強かった。 1990年代から2000年ごろにかけて進められた選挙制度改革・行政改革の結果、内閣総理大臣が従来よりも強い主導力を発揮しやすい(派閥からの掣肘を受けにくい)環境が整ったため、近年では組閣の際に派閥の推薦を受け付けず、内閣総理大臣が任意に与党内あるいは民間の人物を登用する一本釣り人事や、複数の主要閣僚が改造後さらには内閣交替の後も留任するということがみられるようになった。 2010年代前期にねじれ国会の参議院での閣僚問責決議が多発すると、その対応としての改造が行われるようになった。内閣は、問責された閣僚の更迭には応じないという立場を表向きは取るが、参議院は当該閣僚が管轄する議案の審議を拒むため、支障が生じる。そのため、内閣改造という名目でその閣僚を他の閣僚ともども交代させることがある。このような改造は小幅なものになりやすい。
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