改正案の動向
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 00:47 UTC 版)
「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」の記事における「改正案の動向」の解説
通信傍受法は、当時名目上は野党だった公明党の修正案を受け入れ成立したが、推進側にとっては「成立を急ぐ必要」から妥協したと受け止められた。また法への反対は根強く、民主党、日本共産党などは共同で複数回廃止法案を提出したが、多数の賛同を得られず廃案になっている。 そこで、早い段階からアメリカ合衆国・イギリスの通信傍受法制に範を求めた通信傍受の要件緩和・対象拡大などが主張された。2003年に安倍晋三が北朝鮮対策として、2004年には警察庁がテロ対策として主張したのがその例である。しかし本法に基づく法務省による通信傍受に関する法定公表文書によれば、法施行から2017年現在までの間、すべての傍受実績は組織犯罪がらみの薬物・凶器事案であり、通信傍受通話により北朝鮮との通信やテロ案件で起訴された案件は0件である。 他方、志布志事件などの冤罪事件から、密室での犯罪被疑者の取り調べが冤罪を招いているという指摘があった。そこで取調の録音・録画を行う取調可視化が検討され、2006年から検察庁は一部事件で実行に移した。一方、警察庁・検察庁は可視化の代償として捜査権限の拡大を主張し、具体例として通信傍受やおとり捜査適用犯罪の拡大、司法取引導入などが挙げられた。 2011年(平成23年)より法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会(本田勝彦部会長)で、通信傍受の扱いも審議された。審議は井上正仁(法学者)・島根悟(警察庁)・久田誠(法務省)ら、通信傍受拡大論者がリードし、その結果、審議会として「通信傍受の合理化・効率化」を行う提案がなされた。 2016年5月、与野党協議で一部修正後衆議院で通信傍受法改正案が国会で成立。改正案では通信傍受可能な範囲を窃盗や詐欺、児童ポルノなどにも拡大し、12月1日から施行された。 また、従来は通信傍受を行えるのは通信事業者の施設に限定され、通信事業者側の立会人も必要だったが、警察施設での通信傍受が解禁され、立会人の省略が可能になった(警察施設では「傍受指導官」として、警部以上の警察官を立ち会わせることで立会人の代わりとする)。傍受した通信データを暗号化することで、第三者への漏洩を防ぐとしている。これらについては、2019年6月1日から施行された。
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