擬人化の概念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/11 20:39 UTC 版)
擬人化の前提として、人間は他の人間と関わることで生存する社会的存在であるため、意味のありそうな動きをする無機物や、人間の顔や身体の特徴を感じられる図形やパターンを目にすると、無意識にその事象に人間や生命を認知してしまう認識機能がある。 古来より行われた擬人観と現在のそれは大きく異なっている。その代表的な見方が世界多くの神話で用いられた神々の存在とそれに準えられる自然の象徴との関連であり、大自然や絶対的な摂理に対する偶像崇拝の意味合いが強い。ギリシャ神話・ヒンズー神話・日本神話などはその典型であり、哲学や心理学などあらゆる学問に通じていた一つの根本概念であった。日本においても古代から日本においては「森羅万象全ての物に魂が宿っている」という多神教の考え方があり、日本最古の神社いわれる大神神社の神体は山そのものであり、自然崇拝の概念そのものであり、それを象徴する神が存在した。古代ローマの宗教ではさまざまな存在や概念に与えられた名詞がそのまま神格となっている例も多い(勝利=勝利の女神=ウィクトリアなど)。 また日本における神道の流れを汲む多神教の概念は中世~近世にかけて一種の寓話として盛り込まれ、子供の躾けなどに用いられた。「~には~の神がいる」という教えなどがその典型であり、そうして子供達に一つずつ道徳を解いていったといわれる。 その一方でキリスト教やユダヤ教など一つの神を絶対視する概念を持つ宗教では複数の神を擬人視することに対し否定的であり、また「人は人」「他は他」という思想によりそういった擬人観的な要素は少ない。とはいうものの、難解な抽象概念やアレゴリーなどは「無学者の書」とも呼ばれた絵画によって擬人視されることもしばしばあった。この伝統はカリカチュア、漫画へと連なってゆく。 このような擬人観を「認識における擬人化」(レトリック事典より)であると定義しており、対して文学などに見られる擬人化は「表現の擬人化」であると区別している。そしてこの表現の擬人化こそが今日に多く見られる一つの表現であり、擬人化の目的となっている。
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