指揮統制システムの搭載
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 04:52 UTC 版)
「野外通信システム」の記事における「指揮統制システムの搭載」の解説
野通配備開始後には、陸上自衛隊の指揮統制システムをソフトウェア化して搭載することで、指揮階梯から第一線部隊まで情報の共有を可能とし、海自・空自・米軍との秘匿情報の共有も可能とする研究が行われた。 研究開始時の概要として師団等指揮システム(FiCS)と基幹連隊指揮統制システム(ReCS)のサーバ装置(計算機室装置・中央処理装置)やPDA(携帯II型)・GPS(自己位置標定装置)が、ノード装置や広多無(携帯用I・II型)に置き換えられ、前者が有する計画や命令・共通メッセージ(メール)・部隊配置・地形や気象・敵情報等の情報授受の機能が、ソフトウェア化された上で後者へ搭載される。これにより先述の効果以外にもFiCSやReCSを新たに購入する必要が無くなり、またその分増備される野外通信システムも量産単価の低減に繋がり、情報共有による機能強化とコスト削減の両立が可能となる。 この研究は平成25年度に「野外通信システムのフォローアップ」(72億円)の名で概算要求を提出したが、予算不足等を理由に取り下げられた。ただし研究の一部が別事業として、平成25年度から平成28年度までに将来的に野通の広多無と海上自衛隊の艦船部隊のソフトウェア無線機と航空自衛隊の高射部隊のソフトウェア無線機との間で音声秘匿通信を可能とし、島嶼防衛や弾道ミサイル防衛の効率化を実現する「広帯域多目的無線機への機能付加(統合通信)の研究」(10億円)が行われた。その後、平成26年度には「野外指揮・通信システム一体化技術の研究」(58億円)と名称を変更したものが承認され、平成26年度から平成29年度までに運用実証型研究として「野外指揮・通信システム一体化技術の研究試作(運用実証型研究)」(総経費80億円、内26年度予算58億円)が行われる予定である。続いて平成27年度には「野外指揮・通信システム一体化」(20億円)の名で予算が承認された。 令和2年7月に広域無がマスコミに公開された際には、性能の一環として音声通信以外に、データ通信としてGPSを用いた現在地確認、メールや画像の授受、空襲や化学兵器使用等の各警報一斉送信、共通戦術状況図の共有が可能とある。これらは先述のReCSが保有したサービスであり、後述するように2017年度実施のプログラム改修で広多無に搭載された。 また対空戦闘指揮統制システム(ADCCS)・火力戦闘指揮統制システム(FCCS)は当初は装備に専用の連接装置が必要だったが、後にシステム・装備双方に広多無が搭載された。しかしReCSを搭載した野通を含めた各C4Iシステムは独立しており、他のシステムとの連接は不十分であった。このため、「将来の陸上自衛隊C4Iシステム(仮称)」の名で、陸自指揮システムを含めたFiCS・ADCCS・ADCCS・野外通信システムの他、各種センサー・ウェポンシステム(兵器体系)を標準化することで、「Sensors to Shooters(目標発見から攻撃)」までのC4Iシステムを実現する予定である。本システムはFiCS・ADCCS・ADCCS・野通の改修とSNMS(システムネットワーク管理システム)の開発により構築される。なお、野通にソフトウェア化される予定だったFiCSは維持されるようである。
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