従来のトランスミッションに対する優位性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/13 01:13 UTC 版)
「デュオニック」の記事における「従来のトランスミッションに対する優位性」の解説
従来のコンベンショナルなAT(トルコン+遊星歯車もしくはトルコン+平行軸歯車)は、MTと比べてクラッチがトルコンに置き換わったためクラッチの切断・締結操作が不要となり、変速操作も自動化されてドライバーの操作負担は軽減されたが、反面トルコンの滑りにより動力の伝達ロスが大きかったため、MTに比べ燃費面で不利であった。また、変速は滑らかな一方、MTのようなダイレクト感や素早さに欠けていた。 一方、クラッチ操作や変速を自動化しつつ、MTに近いフィーリングを得ることを目的に開発されたセミATでは、スポーツカーを中心に広く採用され、いまだ多くの車種に設定されているが、改良は進んだものの依然として変速時のショックが大きく、また変速時に駆動系へのトルクの切断時間が比較的長いという問題があった。 そこで登場したのがこのDCTであり、コンベンショナルなAT、MT、セミAT、それぞれの良いとこ取りをしたものと言える。 ギアはMTとほぼ同じ機構を持つため、機械的な伝達効率はMTに迫る。2系統のクラッチセットを交互に繋ぎ変えることにより動力を途切れなく伝達でき、セミATのようなトルク抜けによる違和感も解消している。その他、前述のように高い環境性能を有するなど利点も多い。MTと比べた場合は、厳密に言うと、アクチュエーターの作動用油圧ポンプによる駆動ロスや開放側多板クラッチの引きずりロスの分、伝達効率はMTよりも1~2%程度落ちてしまい、またATと比べた場合でもシステムトータルの質量は現在のところ若干重いが、ドライバーの技量や操作の癖などによらず良好な燃費を得ることができるので、旧来のATの代替システムとしては十分である(なおドイツのクラッチメーカーLuK社の調査では、DCTはエンジンとバイワイヤによりコンピューターにて協調制御されていることから、ATは無論のこと、人間が操作することになるMTよりも更に燃費が大幅に向上するという調査結果もある)。また、DCTの構造はトランスミッションケースをはじめ、ギアやクラッチを含めて旧来のMTと共通化させる事が可能な部品が多く、実際、ラインナップにMTとDCTの両方を用意しているモデルの中には、DCTをベースに設計を一部変更しMTに転用している事例も出てきている。そうした工夫により、DCTの製造コストを旧来のトルコン式ATやCVT以下に抑え、場合によってはMT並とすることに成功しているケースもある。 DCTはこれまで多くのスポーツカーに採用されてきたセミATと比べると、「MTと同様の構造を基本にクラッチと変速の操作を自動化した」という点では同じで、MT並のダイレクト感を得るという点では共通しているが、セミATでは変速に要するタイムラグがあり、その短縮には物理的な限界があった。DCTはクラッチを2系統持ち、それらを状況に応じて瞬時に繋ぎ変えるという構造により、タイムラグを解消した。従ってセミATは一部の需要を除き順次DCTに置き換わっていく物と推測され、実際に多くのメーカーがセミATからDCTに切り替えている。(フェラーリ、ポルシェ、アルファロメオ、BMWなど) また、クラッチ容量を増大させればハイパワー車や大型車などの大トルクを要求する車種にも対応できる。実際、DCTが登場して間もない2005年にはブガッティ・ヴェイロンが最高出力1,001馬力、最大トルク127.5kgf・mを誇るハイパワーエンジンに7速DCTを組み合わせて登場し、さらに2010年には最高出力を1,200馬力、最大トルクを153kgf・mにまで高めたグレードを設定し、DCTが高出力エンジンに耐えうることを実証している。また、同年には三菱ふそうトラック・バスから車両総重量25tを許容するトラック用DCTも開発・搭載され、自動車用の比ではない高い耐久性や長期間に渡る信頼性が求められる商用車の分野でも、バスを含め、着実に広まっていくものと推定される。
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