廃棄・放置されたロボット(経産省系)
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「レスキューロボット」の記事における「廃棄・放置されたロボット(経産省系)」の解説
1979年米スリーマイル島原発事故後に通商産業省が計画した「極限作業ロボットプロジェクト」(1983~1990年)では、18社、2法人、2国立研究機関が参加し約200億の研究費が充てられ、原子力発電施設作業ロボットなどが開発されたが、その後は維持されず廃棄された。この中には日立が製作した、ギリシャ神話のケンタウロスに似た外観の4本脚の半人半馬型のロボットがあった(画像あり)。このロボットは4脚歩行での移動や階段の上下などが行え、ステレオカメラと力覚フィードバック付き4本指を有する7軸双腕マニピュレータを搭載し、遠隔操作でナットを回したり、スパナを使って作業できる優れものだった。 1999年に茨城県東海村で起きた「JCO臨界事故」を受け、同年度に30億円の補正予算を計上して、(財)製造科学技術センターにより「原子力防災支援システム開発補助事業」が進められた。事業を受注した三菱重工、日立製作所、東芝、仏社サイバネティクス/日商岩井が、2001年に原発ロボット計7台をそれぞれ開発していた。しかし2001年度以降は予算付けがなされず、実用化シナリオを欠いたことで、開発から2年後の2003年に全て廃棄されたか、メンテナンスされないまま放置された。その中で東芝の「SMERT-M」は2011年5月20日にガンマ線カメラを搭載するなど改良を加えた上で、福島第一原発1号機原子炉建屋内に投入した(参照)。ロボットが廃棄・放置されたのは安全神話が一因だったとみられる。 それとは別に、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)などが2000年に開発した4種5台のロボットのうち、三菱重工と共同開発した「RaBOT」は維持管理のための予算が付けられず、2010年9月に廃棄された。RESQ-A~Cの3種4台は、2004年以降は放置に近い状態に置かれ、3.11直後は可動不能という状態だった。しかし事故後、RESQ-Aに改良を加えて、可動できるようにした(参照)。 米スリーマイル原発事故後、「極限作業ロボットプロジェクト」(1983~1990年)でプロトタイプが開発されたロボット極限作業ロボット(日立など。原子力プラント内作業を目標として開発したトータルシステム。日立はこの内,脚移動機構を開発) JCO臨界事故後に「原子力防災支援システム開発補助事業」により開発され、その後廃棄・放置されたロボット三菱重工製 「MARS-i」(簡易型作業支援ロボット)「MARS-A」(作業用ロボット,事故後復活)「MARS-T」(重量物運搬用ロボット) 東芝製 「SMERT-M」(作業監視支援ロボット・親機、事故後復活)とこれに搭載できる「SMERT-K」(子機) 日立製 「SWAN」(軽作業用小型ロボット) 仏社サイバネティクス製 「MENHIR」(耐高放射線対応ロボット) ※上記廃棄ロボットの一部は東北大学に引き取られ、うち日立製「SWAN」は仙台市科学館に展示されている。 ※上記廃棄ロボットは全く無駄になったわけではなく、一部は研究者の努力により開発成果が役立てられている。日立製「SWAN」と三菱重工製「MARS-A」「MARS-T」はその後、国際レスキューシステム研究機構と製造科学技術センター(MSTC)による防災ロボットの共同研究に活かされ、MARS-AとMARS-Tは更に「RaBOT」(2010年廃棄)の開発に役立てられた。 JCO臨界事故後に日本原子力研究所等が開発し、後に廃棄・放置されたロボット RESQ-A(初期情報収集用で2台ある。日立・神戸製鋼の共同開発。但し事故後復活。画像あり) RESQ-B(詳細情報収集用、日立。画像あり) RESQ-C(試料等収集用、日立。画像あり) RaBOT(放射線耐性型、三菱重工と日本原子力研究所の共同開発。画像あり)
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