市販薬の服用を巡って
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 03:03 UTC 版)
2015年2月にはグランプリ・デュッセルドルフに出場する予定だったが、遠征前から鼻炎の症状が見られたために市販の風邪薬を使用していた。デュッセルドルフに着くとホテルで同部屋となった普段から仲の良い70kg級の田知本遥にも同じ症状が見られたために、持参してきた市販薬を勧めると、田知本もそれを服用した。薬はプラスチックの携帯ケースに入れられていたために市販薬とは分からない状態だったものの、「緒方のことだから、問題ないことを確認した上で持っていると安心して飲んだ」という。しかし、その後心配となった田知本が緒方に確認を取ると、緒方がこの薬についてインターネットで調べてみた。すると、この薬にはドーピング規定に違反する物質メチルエフェドリンが含まれていることが判り、コーチ陣に報告した。かくして、ドーピング違反を避けるために大会への出場を見合わせることになった。その後、両者は試合を見学することなく強制送還された。市販薬を使わないのはアスリートの常識とされており、本来ならチームドクターが管理する風邪薬を服用しなければならないところだった。各選手には全柔連から事前に服用可能な薬一式を渡されていたにもかかわらず、両選手ともそちらの使用を怠った。全柔連では体重超過などにより大会への出場が果たせなかった選手に対して強化指定選手から除外する措置を講じてきたため、今回のケースでもその処分が適用される可能性があるという。全日本女子代表監督の南條充寿は「強化選手としての義務を怠った」「公費(を含む強化費)で派遣されている以上、ペナルティーが与えられてしかるべきだ」として、両選手に対する強化指定選手の除外を1年以上科す可能性を示唆した。しかしながら、3月の強化委員会で両者に対して実質的には“おとがめなし”となる警告、監督の南條及び代表コーチ5名と両者の所属先の監督2名には注意処分を科すにとどめることとなった。今回のケースは実際にドーピング違反をしたわけではなく、自己申告により出場を取りやめた「法令・規定違反行為」にあたるとして警告扱いとした。「2人の処分は軽い」との意見も出されたが、最終的には強化委員39名のうち38名がこのレベルの処分を妥当だと見なした。なお、海外遠征の際に男子選手には「現在使用している薬をすべて申告」させているが、女子選手には「違反する薬を持っているなら提出」するだけの状況だった。強化副委員長の増地千代里は「故意か過失かという議論になった。体重超過は故意。今回は過失という見解」だと述べた。全柔連副会長の山下泰裕も「計量失敗は自己管理不足。今回は知識不足の過失。我々の中では全然重さが違う」と柔道界の論理を振りかざして今回の処分の妥当性を主張した。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によれば、風邪薬の誤用によるドーピング違反は他の競技にも少なからずあり、多くは3カ月間の出場停止で済んでいるという事実を全柔連が確認したことも今回の処分に影響を与えたという。なお、田知本の大学時代の指導者でもあった山下が、実質上“おとがめなし”とも言える今回の決定に何らかの影響力を及ぼしたのではないかと見る向きもある。さらには、田知本の所属会社が全柔連絡みの大会の協賛ともなっている関係から、財政的側面を考慮したのではないかと指摘する声もある。また、とある強化委員は今大会がグランプリ大会だったからこそ“温情裁定”となったものの、これがオリンピックや世界選手権だったら警告では済まされなかったとの見解を示した。
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