導入慎重派の主張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 05:57 UTC 版)
公共サービスを提供する最終責任は官に残る制度であると推進側はしているが、経済財政諮問会議の議論や宣伝をみると、最終的にはそうではなくなる可能性もあるとの懸念がある。 最終責任まで民間に委譲する「民営化」とは異なる制度であることに注意する必要があるが、民営化と同一視されることが多く、民へ移すという最終目標も同じではないかとの反論がある。 水道等のインフラ事業の場合、低所得者が料金を払えず利用できない、管理がおろそかになり設備が荒廃する等の弊害が発生しており、上水道事業においては世界的に問題となっている。小さな政府という考え方そのものが破綻を来している事例も見られることから、その実効性には強い疑問があるという意見がある。 コスト比較を謳いながら、市場化テスト法制定時に慎重に検討・決定すべきコスト計算方法について、法律制定後数ヶ月も経ってから推進側が難癖をつけて法解釈を変更するなど、法運用にも問題を抱えているとの批判がある。 コスト計算方法の解釈について経済財政諮問会議の言動・宣伝が二転三転しており、落札方法以前の問題が山積みであるとの批判がある。 ハローワーク参入に関する意見交換では、まずハローワークの仕事を請負ありきという企業の一方的な商売的な意見が出ている。 経済財政諮問会議の議事録を見る限りは何でも民間に放り投げることが目的ではないか、との指摘もある。ハローワークの無料職業紹介事業の導入方法を見ても、前述の入札実施モデルとはかけ離れたものになり、手段を選ばない状態が続いているとの主張がある。 意思決定も経済財政諮問会議から官民競争入札等監理委員会に無理に丸投げされており、その過程は不明朗であるとの見解がある。 強引とも言える手法で「市場化テスト」の実施を目指したが、肝心の民間事業者の関心は薄く、「ハローワークが行うセーフティーネットは国として保障すべきで、官以外ありえない。民間職業紹介事業のビジネスモデルの理解が足らないのでは」「落札価格の叩きあいになるようなスキームは本末転倒」などの意見も出されたとされている。 コスト削減によって公共サービスの質が低下するのではないかという点がある。 コスト削減の報道は、ハローワークや他の分野でも市場化テストが導入されているのに、社会保険庁分野だけしか良い実績が存在しない(2007年10月24日付日刊工業新聞、時事通信、東京新聞等の各記事で再検証可能)ともいえる。 求人開拓事業等のハローワーク関連分野で行われた市場化テストでは、数値・顧客の意識調査等の量・質に関してほぼ全ての分野で官が民に勝つという結果が出ているにもかかわらず、総括のみで結果の詳細な検証もおこなわれないまま東京の二つのハローワークで更なるテストを行おうとするなど、国民に対するサービス向上や行政サービスの効率化といった本来の目標とはかけ離れて言っているのではないかといった意見もある(この市場化テストの実施にも参加業者への成功報酬・委託料などの名目で多額の税金が支払われている)。 今まで不透明だった行政サービスの内容やコスト構造を透明化するとあるが、日本経済新聞等の報道記事を見る限りは、コスト計算方法について法制定後かなり経過してから、推進側のスタンスへその解釈を突如変更したりする事態があったりしており、別に不透明な問題が生じている。 法務局事務参入業者の中には、虚偽の社会保険関係届け出(実際よりも低い標準報酬を届け出て事業主負担を不当に免れる)をし、それが明らかになると未払い給料を残したまま自己破産したような例もある。このような虚偽届け出が発覚した後も、引き続き業務を受託できていたことを問題視する声があるが、官民競争入札等監理委員会は我関せずで、あくまで法務省の問題としている。
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