寄席芸人伝
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『寄席芸人伝』(よせげいにんでん)は、古谷三敏による日本の漫画。漫画雑誌『ビッグコミック』(小学館)において、1978年(昭和53年)から1989年(平成元年)まで連載された[1]。全153話[2]。明治、大正、昭和の各時代を舞台とし[3]、各話ごとに架空の落語家、もしくは落語の関係者を主人公として、主に寄席にまつわる人々のエピソードを描く。基本的に1話完結のオムニバス形式であり[注 1]、全話に共通した主要登場人物や物語は存在しない[注 2]。
注釈
- ^ 単行本第8巻収録の第106話「質入れ遊喬」など、1話が「前編・後編」構成になっているエピソードもいくつかある。
- ^ 同一の人物が複数話に登場するケース自体は存在する。例として、単行本第3巻収録の第33話「若手潰しの満橘」では、落語家の三遊亭満橘が主役であり、脇役として五厘の市之助が登場するが、同巻の第37話「五厘の市之助」ではその市之助を主役、満橘を脇役として、市之助の前日談が語られる。
- ^ あべ 善太(あべぜんた、? - 1999年〈平成11年〉3月14日)。神奈川県出身の漫画原作者。他に原作を担当した漫画に『味いちもんめ』があり、1999年に同作で第44回小学館漫画賞を受賞した[8][9]。
- ^ 一方で立川談之助は「ビッグコミックの企画先行で制作されたらしい」と語っている[23]。
- ^ 矢島 裕紀彦(やじま ゆきひこ、1957年〈昭和32年〉 - )。東京都出身の作家。早稲田大学政治経済学部卒業。旺文社の『現代日本人物事典』などの編集を経て、文筆に専念している[30]。
- ^ もっとも立川談之助は、「2ちゃんねるで評判が良いということは、世間一般的に見れば罵倒に値する」と指摘している[23]。
- ^ 具体的には、扉絵を実際の落語家と比較すると、槍の演じ方が異なる、手拭の畳み方が異なる、この時代に高座にあったはずの火鉢が無い、話に入ると羽織を脱ぐはずなのに着たまま、といった具合に、扉絵の時点で4点もの誤りが指摘されている[23]。
- ^ しかし#制作背景にも述べたように、古谷自身は落語を好んで聞いていたと語っており[6]、自著『落語うんちく高座 実録・寄席芸人伝』でも、寄席に足を運んだり、落語を聞いたりした体験を語っている[36]。
各回における注釈
- ^ ルビは原作に記載のとおり
- ^ 亭号不明の場合は()内に師匠の亭号を、それも不明な場合は(?)と記載
- ^ 話のオチまで記載すると著作権に抵触するため、途中までの内容を記載
- ^ 現実では、「お釜さま」を初代柳家小せんが「鼠の懸賞」に改作し、それをさらに3代目三遊亭金馬が改作して今の形となった
- ^ 現実では三遊亭萬橘(初代)が真っ赤な衣装揃えで踊っており、ヘラヘラの萬橘と呼ばれていた
- ^ 原文ではイロの上に傍点
- ^ 若い男女のなれそめの噺で、年を取ってからだと若干いやらしさを感じさせる
- ^ 現実では遊三ではなく2代目圓遊で同様のことがあったと噂されている
- ^ 師匠が1日1回を3日語るので、それだけでマスターしなければならない、ということ
- ^ 現実では、2代目を除く3名が若くして急死していることから出世名ではなく、現在も空き名跡となっている
- ^ 現実ではそこまでの大看板ではなく、5代目以外は改名している
- ^ 昔は1日を12に分けたので、2×6=12で一日中のことを二六時と言った
- ^ 現実では、野村無名庵がまとめた「落語通談」に「魂違い」「水中の球」「おうむ徳利」という名前がみられる
- ^ 現実の船徳は、初代 三遊亭圓遊の作で、文中では「一時の物」と批判されていたステテコ踊りの演者でもある
出典
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- ^ 永倉万治『小説寄席芸人伝』小学館〈BIG NOVELS〉、1984年6月20日、カバー頁。全国書誌番号:85004782。
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『サライ』2019年2月号, pp. 18–21, 矢島裕紀彦「インタビュー 古谷三敏」 - ^ a b c d e f g h i j 『サライ』2019年2月号, pp. 58–59, 矢島裕紀彦、和田尚久「別冊付録解説 古谷三敏『寄席芸人伝 昭和の名人特別編』を読む」
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- ^ 立川談修 [@tatekawadansyu] (2017年6月30日). "『昭和元禄落語心中』を読んで落語の世界に興味を持った漫画好きの貴兄には、ぜひ古谷三敏著『寄席芸人伝』という漫画も読んでもらいたい。 30年以上前の作品だけど、今でも読む手立てはあると思う。一話完結で読みやすいし。" (短文投稿). X(旧Twitter)より2023年6月20日閲覧。
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- ^ 菅野朋哉「危機的状況の中で当事者に全くその意識がない寄席の静かなる黄昏」『朝日ジャーナル』第28巻第27号、朝日新聞社、1986年6月27日、40頁、NCID AN00376670。
- ^ 「私と信仰 マンガ家 古谷三敏さん(1) お釈迦様の顔」『産経新聞』、1995年11月27日、東京夕刊、7面。
- ^ 文藝春秋 編『文芸春秋漫画賞の47年』文藝春秋、2002年12月10日、322頁。ISBN 978-4-16-321510-5。
- ^ 古谷 1984, p. 40,268-269.
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