地位に関する論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 05:40 UTC 版)
沖ノ鳥島が日本国の領土であり、その周囲に日本の領海・領空を持つことは、どこの国家からも異論が出ていない。ただし下記のように、沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域(Exclusive Economic Zone、略称:EEZ)の存在について、日本国と中華人民共和国(中国)、中華民国(台湾)および大韓民国(韓国)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の間で、主張が異なっている。 1994年11月16日に発効した、国際海洋法の基礎となっている海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)では、「島」と「岩」について以下のように定義されている。 第121条 第1項:島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。 第121条 第3項:人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。 日本国はこの第121条 1項の定義に従って沖ノ鳥島は「島」であるとし、「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)発効に併せて制定した「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(平成8年法律第74号)によって、沖ノ鳥島を中心とする排他的経済水域を設定した。 しかし、沖ノ鳥島が同3項の「岩」にあてはまるとすれば、沖ノ鳥島は領海は有するものの、排他的経済水域や大陸棚を有しないということになる。海洋法専門家でハワイ大学マノア校教授のジョン・ヴァン・ダイクは、1988年1月21日のニューヨーク・タイムズで「沖ノ鳥島――せいぜいキングサイズのベッドくらいの大きさしかない、2つの浸蝕された突起から構成される――」と、独自の経済的生活を維持することのできない居住不可能な岩という記述に間違いなくあてはまるので、200海里の排他的経済水域を生み出す資格を与えられない、と主張した。ダイクは同様の主張を繰り返し、その意見は2005年2月16日のウォール・ストリート・ジャーナルで「日本の立場は、イギリスが1990年代にEEZの主張を諦めた、大西洋のロッコール島の例に酷似している」「沖ノ鳥島のEEZをもっともらしく主張することはできない」として紹介されている。こうした意見に対して日本国政府は、「岩」の定義が同条約上に存在しないことを根拠に、沖ノ鳥島の排他的経済水域を主張している。 2003年以降には、中華人民共和国および大韓民国の2か国が日本の主張に対する異議を申し立てるようになった。両国は、沖ノ鳥島が日本の領土であることは認めるものの、それは国連海洋法条約第121条第1項の「島」ではなく、同条第3項の「岩」であり、沖ノ鳥島周辺に日本国が排他的経済水域を設定することはできないと主張している。 なお同条約には、島に関する以下のような条文も定められている。沖ノ鳥島の北小島・東小島に設置された鉄製消波ブロックやコンクリート製護岸・チタン製防護ネット、および観測所基盤・観測拠点施設については、この条文に記された人工の「構築物」に該当する。ただし、沖ノ鳥島の本体は自然に形成されたものであるため、この条文には該当しない。 第60条 第8項:人工島、施設及び構築物は、島の地位を有しない。これらのものは、それ自体の領海を有せず、また、その存在は、領海、排他的経済水域又は大陸棚の境界画定に影響を及ぼすものではない。
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