困難な建設計画
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 21:39 UTC 版)
青蔵鉄道のチベット区間には、タンラ山脈(唐古拉山脈)を超える、最高地点が海抜5,071 m の唐古拉峠が所在している。その近くの唐古拉駅が海抜5,066mで、「世界一高い場所にある鉄道駅」となる。平均海抜は約4,500m、また海抜4,000m 以上の部分が960km もあり、このような高所に鉄道が建設されるのは世界でも例がない。まさに世界の屋根を走る鉄道といえる。ちなみに並行する青蔵公路の唐古拉峠は海抜5,231mである。 格爾木(ゴルムド) - ラサ間には550 kmにも及ぶ凍土地帯が広がっており、それに適した工法の研究は、ロシアやカナダでの先例も参考にしながら、40年以上にも及んでいる。実際の作業では低い気圧と酸欠による高山病に加え、昼夜の気温差、冬季の強風や厳寒が関係者を苦しめた。 季節ごとに凍上と融解を繰り返す地域では、地中深くまで基礎杭を打ち込み、高架として地表から浮かせる工法を採ったほか、線路が直接地表に敷設される永久凍土区間では、地中温度の上昇を防ぐため、冷媒としてアンモニアを封入した金属製の放熱杭が軌道に沿って多数建植されている。現時点での対策は万全であるものの、将来の地球温暖化により永久凍土の融解が進行した場合、更なる手当てが必要になる可能性がある。また、気候問題とは別に、放熱杭や、無人施設における列車運行を司る太陽電池パネルの盗難を危惧する声もある。 沿線となるフフシル山地の「ホフシル自然保護区」では、当地特有のチベットカモシカをはじめ、多くの高山植物など、希少かつ脆弱な生態系を維持するため、中国政府は当初の予算の12億元を上回る20億元を投じている。具体的には保護動物の棲息地を避ける経路とする、25箇所の動物用通路を設ける、当地の石材には手をつけず 50 km ほど離れた植生の無い土地に採石場を作る、土をなるべく掘らない、残土を積み上げたままにしない、掘削で生じた地下水を河川に流す場合は沈澱処理を行う、などとなっている。同政府の交通関係の建設計画で、生態系の保護に配慮した建設計画は初めての例となった。 凍土地帯の高架橋 唐古拉駅駅舎 ラサ駅広いプラットホーム
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