問題点と改良点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 06:50 UTC 版)
「運動エネルギー回生システム」の記事における「問題点と改良点」の解説
安全性・信頼性 各チームがテストを進めている中で、2008年7月にはヘレス・サーキットにおいてBMWザウバーのメカニックがKERS搭載マシンに触れて感電する事故が起きたり、レッドブル・レーシングのファクトリーでKERSのテスト中に煙と有毒ガスが発生するなど、KERSの開発中の事故が続出したため、一時は安全性が確保できるまでKERSの導入を延期すべきだとの意見も出ていた。 実戦において重大事故は起きていないが、故障によりレース中使用できなくなるケースが発生。とくにレッドブルは2011年にKERSのトラブルが続発して対策に追われた。 重量 2009年の導入当初、電気式のバッテリーシステムの重量は最大で40kg以上あったため、マシンの運動性能へ及ぼす影響が大きかった。通常、F1マシンは最低重量規定よりも軽く作られ、余剰分のバラストを各部に積んで重量配分を調節する。KERS搭載車はリアヘビーになる上に、重量配分の自由度も減ってしまい、2009年から復活したスリックタイヤに見合うバランスをとることが難しくなった。 その後、システムの軽量化が進み、マクラーレンの発表によれば、同チーム搭載のKERSは2009年シーズン終了時に25kgまで軽量化された。2011年からは最低重量が2年前に比べ約40kg増量され、KERSの重量デメリットはほぼ打ち消された。それでも、バラストを少しでも多く載せられるよう、ドライバーは体重を減らす努力を求められている。 費用対効果 F1のコスト削減が進められる中で、KERSの開発は高価すぎるという議論が生じた。FOTAはバジェットキャップを巡るFIAとの対立の最中にこの問題を再検討し、2010年の使用自粛という紳士協定に至った。 2011年からの復活に向けて、FOTAは標準ユニットの供給を検討したほか、供給価格を100万ユーロに抑えるという案もあったが実行されず、メルセデスは600万ユーロに値上げしたと報じられた。ルノーの場合エンジンが1000万ユーロで、KERSとサポートの費用は500万ユーロと述べている。 また、レギュレーションで回生・放出量や出力が低く設定されているため、KERS搭載車同士が競争する状況では効果が現れにくい。オーバーテイクの促進という意味では、2011年から導入されたドラッグリダクションシステム (DRS) の方が効果的であり、KERSはDRSを作動できる後続車に抜かれないためのディフェンス手段という用法が増えている。
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