問題点と批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 10:06 UTC 版)
しかしながら、効用理論から選択理論への推移は、一方では形式的厳密性という科学の要請を満たしはするが、他方では欲望形成が実際には社会的、文化的および政治的な諸要因にも依存しているということ対する配慮を欠いている。そのため、いわゆる近代経済学の方法的特徴である個人主義的もしくは要素論的な性格が強められ、その結果として、そのような方法を採用していない社会諸科学と近代経済学との交流が困難になっていった。加えて、たとえば経済政策について議論する場合のように、諸個人の選択結果について価値判断を下そうとすると、選択の合理性をめぐる形式的分析だけでなく、選択の意味内容についても議論しなければならない。しかし、そうした議論のための新しい準備がなかったので、近代経済学は「物欲をめぐる快楽の最大化」という古い「経済人」の想定に頼るほかなかった。 このような古い「経済人」の想定が、個人主義と物質主義に基づいた近代経済学の(新しいと思われている)形式的分析を支えているといえる。また、人類学や経済史の視点からは、人間は社会的な地位、権利、資産のために行動するのであり、個人的利益や財貨の所有は結果にすぎない、と批判されてもいる。
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