単位認定試験問題への対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 23:10 UTC 版)
2015年度の放送大学の単位認定試験(日本美術史)をめぐり、大学側は「問題箇所」と認定した部分を削除したうえで問題を公開した。 経緯 問題とされたのは、導入部の5行であり、「現在の政権は、日本が再び戦争をするための体制を整えつつある。平和と自国民を守るのが目的というが、ほとんどの戦争はそういう口実で起きる。1931年の満州事変に始まる戦争もそうだった」、「表現の自由を抑圧し情報をコントロールすることは、国民から批判する力を奪う有効な手段だった」などと記述されていた。 複数の専任教員による事前の校正では特に問題視されなかったが、日本美術史の試験を受けた学生から「現政権の批判ともとれる文章があった」という疑義が出された。これを受け、大学の事務担当者(単位認定試験係)は、問題を作成した佐藤康宏に削除や修正を求めたが、佐藤は試験問題に不備はないと回答したところ、該当部分の削除を通告する文書が、宮本みち子副学長名で佐藤のもとに届けられた。 学長であった岡部洋一は、一連の経緯について「本学としては、科目を担当する教員の学問の自由を基本に大学運営に取り組んでまいりました」、「本学においては、放送による授業と印刷教材及び単位認定試験の相互の補完関 係及び一体性に鑑みて、単位認定試験についても公平性、公正性の確保が必 要と考えてきました」、「本学の考え方を同教授にお伝えしましたが、残念ながらご理解をいただけず、本学の責任において一部削除した上で公表することとしました」と声明を発表した。 來生の解釈と批判 副学長であった來生は、毎日新聞で「学問や表現の自由には十分配慮しなければいけないが、放送大学は一般の大学と違い、放送法を順守する義務がある。試験問題も放送授業と一体のものと考えており、今回は放送法に照らし公平さを欠くと判断して削除した」という見解を表明した。來生の見解の根拠は放送法第4条であり、放送局に対し「政治的に公平である」「意見が対立している問題は、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」ことを求めるものである。 しかし、総務省放送政策課の担当者は、紙媒体は放送されなければ放送法第4条の規制対象にならないとして、來生の解釈を否定する見解を示し、メディア法の専門家である服部孝章は毎日新聞紙上で、学問の自由の観点から來生の解釈を「異常な反応だ」と批判した。 ◇異常な反応だ 服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)の話 政権批判がダメならば慰安婦などいろいろな問題が出題できなくなってしまう。削除する必要は全くない。表現の自由以前に学問の自由をどう考えているのか。 放送大学の試験問題の出題が政治的中立性を保たなければならないのならば、講義そのものが成り立たなくなり、多くの授業で放送大学の存在意義が問われる。学問における中立性が何なのかが問われる異常な反応だ。
※この「単位認定試験問題への対応」の解説は、「來生新」の解説の一部です。
「単位認定試験問題への対応」を含む「來生新」の記事については、「來生新」の概要を参照ください。
- 単位認定試験問題への対応のページへのリンク