割増賃金の算定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:06 UTC 版)
時給制であれば、その時給の金額 日給制であれば、その日給を1日の所定労働時間(日によって所定労働時間数が異る場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額 週給制であれば、その週給を1週の所定労働時間(週によって所定労働時間数が異る場合には、4週間における1週平均所定労働時間数)で除した金額 月給制であれば、その月給を1月の所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異る場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額 月、週以外の一定の期間によって定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額 が、割増賃金の算定に用いる時間給となる(施行規則第19条)。こうして求めた時間給に、時間数と所定の割増率を乗じて求めた額を支払わなければならない。 割増賃金の基礎となる賃金には、以下のものは算入しない(第37条5項、施行規則第21条)。これらは労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支払われる賃金であり、これらをすべて割増賃金の基礎にするとすれば、家族数、通勤距離等個人的事情に基づく手当の違いによって、それぞれに割増賃金に差が出てくることになるためである。これらは限定列挙であって、これにあてはまらない賃金は、労働に付帯するものとしてすべて計算の基礎に含まれる(例えば、危険な作業が時間外・休日に行われた場合における危険作業手当は、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならない(昭和23年11月22日基発1681号))。またこれらに該当するか否かは、名称にとらわれず実質で判断しなければならない(昭和22年9月13日基発17号)。 家族手当家族数にかかわらず一律に支給されるものは算入しなければならない(昭和22年11月5日基発231号)。 扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基礎として算出した手当は、名称の如何を問わず家族手当として取り扱う(昭和22年12月26日基発572号)。 通勤手当一定額が最低額として距離にかかわらず支給される場合の当該一定額は算入しなければならない(昭和23年2月20日基発297号)。 別居手当 子女教育手当 住宅手当住宅に要する費用とは、賃貸住宅については、居住に必要な住宅(これに付随する設備等を含む)の賃借のために必要な費用、持家については、居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用をいう。費用に応じた算定とは、費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し費用が増えるにしたがって額を多くすることをいうものであること。住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、住宅に要する費用にかかわらず一律に定額で支給される手当は、本条の住宅手当に当たらない(平成11年3月31日基発170号)。 臨時に支払われた賃金(支給額があらかじめ確定しているものを除く) 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金 年俸制において、毎月払い部分と賞与部分とを合計して、あらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分は、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならない(平成12年3月8日基収75号)。この場合、決定された年俸額の12分の1を月における所定労働時間数(月によって異なる場合には、1年間における1ヵ月平均所定労働時間数)で除した金額を基礎額とした割増賃金の支払いを要する。 使用者が、労働者に対し割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには、労働契約における賃金の定めにつき、それが通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討した上で、そのような判別をすることができる場合に、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、第37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきであり、上記割増賃金として支払われた金額が第37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負う(高知県観光事件・最判平成6年6月13日)。通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することができないのであれば、割増賃金を支払ったことにはならない(明確区分性。テックジャパン事件・最判平成24年3月8日)。もっとも、第37条は、同条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり、使用者に対し、労働契約における割増賃金の定めを第37条等に定められた算定方法と同一のものとし、これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない(国際自動車事件・最判平成29年2月28日)。つまり、計算方法それ自体については、結果として割増率以上になるのであれば、必ずしも第37条等と同一のものにする義務はない。年俸制において割増賃金をあらかじめ基本給に含めて支給する方法においては、基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金にあたる賃金と割増賃金とにあたる部分とを判別できるようにすることが必要である、割増賃金にあたる部分の金額が法所定の算定による金額を下回るときは、使用者はその差額を労働者に支払う必要がある(医療法人康心会事件、最判平成29年7月7日)。 なお、時間帯ごとに時間給が異なる場合は、就業規則等に特段の定めがなければ、その超えた時間帯における時間給に対して割増を行えば良い。例えば業務の繁閑により8時〜17時(休憩1時間)の時間給が1,000円で、17時〜22時は時間給800円である場合、所定労働時間が8時〜17時の者については17時以降は原則として1日8時間超えの時間外労働となり、800円を25%割増した1,000円を支払う必要がある。結果、事実上の割り増しがない場合もある。
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