全面自供
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 07:42 UTC 版)
「北九州市病院長殺害事件」の記事における「全面自供」の解説
2人はいったん自供しかけたものの、その後否認を続け、4月2日の拘置期限切れが迫っても、捜査本部は2人がAを殺害したことを裏付ける決定的な証拠を得ることができずにいたことから、福岡地検小倉支部との協議の末、とりあえず2人を勾留期限の切れる2日に死体遺棄罪で追起訴し、起訴後拘置しながら取り調べを継続する方向で検討していた。一方、3月27日には、警察庁科学警察研究所から、「死体に巻きつけられていたガーゼの内側に付着していた毛髪20本のうち、1本は血液型を含めて、Sの妻と完全に一致した」という結果が出ていた。ガーゼの内側に付着していた毛髪は、犯行時に付着した可能性が高いことや、犯行当時、Yが変装用にSの妻のヘアピース(Sの妻の毛髪が付着していた可能性が高い)を着用していたことから、有力な物証となった。しかし、福岡高検の関係者からは、「現時点では死体遺棄容疑でさえ、公判維持は難しい」という慎重論も上がっており、同月31日の検察捜査会議では、処分保留とすることも含めて検討されていた。 3月31日夜、Yは取り調べにあたっていた生嶋甚六警部補と、国武俊伸巡査部長に対し、泣きながら「今まで嘘を言って申し訳ありませんでした」とすがりつき、「Sと共謀し、『ピラニア』店内にAを騙して誘い込み、SがAを何度も刃物で刺して殺害した。その間、自分が『ホテルニュー田川』へ金を取りに行ったが、預り証がないため渡してもらえず、失敗した。死体の解体もSが実行し(自分はもっぱら死体を押さえていた)、死体はフェリーから海に捨てた」と全面自供を始めた。生嶋がYに対し、自ら見聞きして調べた情報を粘り強くぶつけ、「かわいい坊や(当時7歳の長男)のためにも本当のことを言ってくれ」と諭したところ、Yは激しく動揺を見せながら自供に至った。事件発覚からこの日まで(約5か月間)に投入された捜査員の人数は、6,700人におよんだ。 Sの取り調べは、島伍助巡査部長が担当していた。Yの自供に続き、翌4月1日、Sも取調官からYが自供した旨を聞かされ、同日13時に「自分がAを刺した」と自供。その自供内容は、Yとほとんど同じ内容だった。Sは全面自供後、捜査員に対し「いきなり本件の死体遺棄か殺人で逮捕されていたら、2、3日で自供していただろう。別件で逮捕されたから『逃げ切れるかもしれない』と思い、『自分からは絶対に自供しない』と心に決めていたが、Yが全面自供したら自分も自供するつもりだった」と吐露している。一方、2人は自供後も、「殺人ではなく傷害致死だ」と主張していたが、捜査本部は遺体運搬用のロッカーや、切断用の凶器まで事前に用意した計画性の高さから、計画的殺人と断定した。
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