信号システムとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 05:35 UTC 版)
鉄道の駅構内の信号機は、番線への到着を許可する「場内信号機」と、番線からの出発を許可する「出発信号機」の2つが基本となっている。一線スルーでない交換駅では、上り本線とされた番線には上り列車用の場内信号機と出発信号機が立てられ、そのままでは下り列車を運転することができない。 一線スルー化にあたっては、上下通過列車を上下主本線に通すため、上下主本線・上下副本線ともに上り列車用・下り列車用の両方の信号機を立て、それを制御できるように信号回路の変更を行う。またこのような駅の場合は列車集中制御装置 (CTC: Centralized Traffic Control) でも上り線に入る列車は上り列車、下り線に入る列車は下り列車とみなしていたため、一線スルー化にあわせてどちらの線路にどの方向の列車が入っているかを識別する装置を設置する必要がある[要出典]。つまり、線路の配線(分岐器)は片側が直線となっていてもそれが上下主本線ではなく、信号システムの上で上り主本線と下り主本線が設定されている場合は、一線スルーではない。 また、一般駅で貨物取扱があった頃、本線が直線で貨物側線がカーブして上下双方向で本線と接続していたケースがたまにあった(例として貨物扱い廃止前の伊勢竹原駅)が、こうした行き違い目的ではない分岐のある駅はただの棒線駅である。 日本以外の鉄道では、複線区間においても単線並列運転として、列車の進行方向を限定することは多くない。停車場内の番線でも、どの線路でもどちら方向へも運転できるのが通常である。アジアにおいても、古くからジャワ島で高密度の鉄道が配備されていたインドネシアでは蒸気機関車の頃から一線スルー型の駅が存在していた。 一方日本の鉄道においては、複線区間では左側通行が原則とされている。これに対して停車場内での列車の行き違いに際しては、かつての日本国有鉄道(国鉄)の運転取扱基準規程では特に指定した場合を除き左側通行と定めていたが、国鉄分割民営化によってこの規程はなくなり、停車場内において左側通行をしなければならない規程上の根拠は存在しない。 ところが、1977年(昭和52年)12月に国鉄電気局が定めた地方交通線用の信号設備設計施工標準では、地方交通線において自動進路制御装置 (ARC: Automatic Route Control) 付きの4C形CTCを導入することとしていた。この装置では、ARCに列車選別機能がないため、ARCで制御を行う前提では自動的に左側通行となる仕様であった。この装置でも、連動装置に必要な進路の設定を行っておき、指令員が手動でCTCの操作を行えば交換駅における列車進入番線を任意に設定できるが、実際には導入費用削減のために連動装置の進路設定も最小限に抑えられている駅がほとんどであった。これにより、たとえ配線の上では直線側の速度制限のない番線があるように見えても、信号システムでは上り本線と下り本線が区別され、通過列車が速度制限を受ける番線を通らなければならない事態が発生することになった。
※この「信号システムとの関係」の解説は、「一線スルー」の解説の一部です。
「信号システムとの関係」を含む「一線スルー」の記事については、「一線スルー」の概要を参照ください。
- 信号システムとの関係のページへのリンク