使用目的に関する推測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 18:23 UTC 版)
「アンティキティラ島の機械」の記事における「使用目的に関する推測」の解説
設計者は天体の位置を計算するために天体運行の理論まで知っている必要はなかった。バビロンの天体計算式「システムB(英語版)」が紀元前260年までには考案され、ギリシャに受け継がれていたのである。当時ごく少数の、太陽と月とその他の天体の運行の基礎が理解できる教育された知識人と、教養のない庶民との間には科学と文化において大きな隔たりがあった。 キケロ、プリニウス、プラトン、小セネカ、プトレマイオス、アリストテレスなどによる多くの古代資料によると庶民は日食や月食を超自然現象と見なし、恐れていたとされる。「…無教養な者はたやすくそれら(日食など)を混乱や凶事の前触れと考えた」。 プライスは、この機械が博物館やロドス島の公会堂で一般に向け展示されていた可能性があるとしている。ロドス島は機械工学、特にロドス島民の専門技術であるオートマタ(機械人形)の展示で知られていた。古代ギリシャの9歌唱詩人の一人ピンダロスは著作「オリンピック叙情詩」の第7巻においてロドス島について次のように言及している。 "The animated figures stand(命を与えられた人形が立っている)Adorning every public street(あらゆる街角を飾って)And seem to breathe in stone, or(石の中で息をするように)Move their marble feet.(大理石の足を動かすように)" だが、この説に対しては以下のような反論がある。 展示用には小さい。設計者は小型化(現代のラップトップコンピューターと比較されてきた)を意図していたようであり、結果として前後の表示盤は公共の場での表示用には小さすぎる。アテネの風の塔との単純比較からすると、アンティキティラ島の機械の製作者は固定された場所(大学、寺院、博物館、公会堂など)での展示よりも携帯性を追求していたように思われる。 機械には扉のような板が付属しており、そこには少なくとも2,000以上の文字が刻まれていた。この板は研究プロジェクトでは時折、取扱説明書と言われているものである。機械に説明書がきちんと付随していることから、この機械は個人用の携帯機器であると容易に想像される。 説明書が存在することからはさらに、この機械が科学と機械工学の専門家の手により、非専門家の旅行者のために作られたのではないかと推測できる。 以下の理由からこの機械は航海術の用途を目的としていなかったと思われる。 食の予想など航海に必要ない機能を持つ。 海上の厳しい環境下では歯車が容易に錆びてしまい、すぐに使用不能になる。 この機械はメトン周期に追従し、日食を予測し、古代オリンピック競技会の日取りを計算できた、という新たな発見が2008年7月30日学術誌ネイチャーに掲載された。 機械に刻まれた文は、ケルキラ島があるギリシャ北西部のイリュリアとイピロスの暦の月の名称とよく合っている。
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