使用と普及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 08:03 UTC 版)
カロチャ地域ではブラウスやスカート、エプロン、ボンネット、テーブルクロス、タペストリー、クッションなど、さまざまな日用品に刺繡をあしらう。結婚式などでは刺繡の入った民族衣装を着用する。プリーツスカートなどに刺繡で模様を入れる習慣があり、若者は赤やピンクなど派手な色で刺繡をした衣装を着る一方、年配の既婚女性は寒色系の刺繡の衣類を着ることが多い。女性の衣装の場合はブラウスの上に着るベストやエプロンなどにもカロチャ刺繡をほどこし、組み合わせて着る。スカートやベスト、帽子などの民族衣装は前側だけではなく、後ろ側にも刺繡を施す。既婚女性は頭にリボン飾りを着用しない。こうした既婚女性の着る衣類は暗めの色合いになるため「哀しみのカロチャ」と呼ばれることがある。この種のカロチャは品がよく落ち着いた配色であると言われている。 カロチャ刺繡の担い手は庶民の女性が中心であったが、かつては作品から「作り手である女性の身分」などが判別できたという。20世紀の後半頃までは、カロチャ地域の若い女性は多くが刺繡の技術を身につけていた。花嫁支度として家具や衣類に刺繡をし、作った作品を「チューリップの箱」と呼ばれる長持に入れて婚家に持って行く習慣があった。かつてはこのような刺繡の作品は「清潔の間」を示す「ティスタ・ソバ」という一室を装飾するのに用いられた。 民芸品としては19世紀の中頃になってからよく知られるようになった。それまでは農閑期に趣味と実益をかねた作業として刺繡が行われていたが、19世紀末には商品として作られるようになっていった。ブダペストのイベントでカロチャの人々が刺繡の民族衣装を着てダンスを踊る機会などがあり、そうしたことをきっかけに注目されるようになったという。観光用の土産物屋などでも人気商品としてよく売られている。伝統的なカロチャ刺繡ではさまざまな植物が密にひしめきあうようなデザインが好まれるが、土産向けのものなどにはあっさりとひとつだけ模様をあしらうようなものもある。青色系の刺繡が海外の観光客に人気があるという。 21世紀には「ハンガリーを代表する刺繡のひとつ」であり、「ハンガリー民芸の象徴」と言われるようになった。レトロブームの一環としてカフェなどの店員がカロチャ刺繡の衣類を着用するようになる一方、刺繡ができる人口は減っている。ハンガリーのファッションデザイナーの間で、カロチャ刺繡のモチーフを取り入れた衣服を作る動きもある。2017年にドバイのブランドであるオール・シングス・モチがハンガリーコレクションを発表した際には、カロチャ刺繡のモチーフが使用された。
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