体外離脱現象の解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 02:19 UTC 版)
脳内現象説に否定的な主張では、体外離脱の存在が論拠に挙げられる事が多い。 体外離脱が脳内現象ではない、と考えられる根拠は主に2種類の事例による。1つは体外離脱中に、通常の手段では知りえない情報を知覚できたケースが多々ある事である。体外離脱中に面識のない者と出会い、意識回復後にそれが自分の親族であった事が判明するケースや、体験者本人が知らない情報を死んだ親族から伝えられるケースなどがこれに当たる。特に、臨死体験中に出会った人物が実世界では死亡していた、という事を意識回復後になって知る事例が多数あり「ピーク・イン・ダリエン・ケース」とも呼ばれている。 もう1つは、心拍停止や全身麻酔で意識不明下にある者が、「意識が身体から抜け出した」最中に見た光景を(意識回復後に)詳細に描写できる、という点がある。北テキサス大学教授であるジャニス・ホールデンは、1975年から計37名の著者により書かれた論文や学術書内の臨死体験のケースを107例分析した。いずれも体外離脱中に見られた光景の正しさを、研究者が後に検証しようと試みたケースであった。一つでも描写のディテールに間違いがあると不正確である、とする最も厳密な基準をもってしても、不正確と認定された体外離脱のケースは僅か8%だった。 こうした現象については別の解釈もある。手術中に全身麻酔をかけられていた患者が、麻酔が不十分だったため意識が半分残り、周囲の出来事を記憶していたという現象がある。(こうした麻酔不足が起こる確率は0.1〜0.3%である。)こうした例では後に催眠によって患者に聴覚などが残っていたことが明らかになる場合が多い。こうした「半意識的覚醒」が体外離脱の正体であり、患者には聴覚が残っていたため、そこから得られた情報で、記憶を後で組み立てたのではないかとする解釈がある。 しかし、マイケル・セイボムはこの説を否定している。それは以下のような理由である。(1)臨死体験者が詳細に描写した内容は、蘇生者によって口にされなかった事柄も含まれていたり、そもそも周りに会話をする者が誰もいない状況でも起きていた事から、視覚的にしか確認され得ないものであった。(2)「半意識的覚醒」状態では、患者は安らぎの感覚ではなく恐怖感や悪夢を報告している。また、詳細な視覚的報告も、体外離脱の感覚も報告していない。(3)実際に半意識状態で聴覚が残っていた臨死体験者が、両者の知覚は全く違うものであったと述べている。また、セイボムが収集した事例には、心停止後3時間にわたって続けられた手術の全容を報告できた例などがあるが、聴覚だけを頼りにこれらの記憶を再構築する事は難しいとも考えられる。 イギリスの研究者ペニー・サートリ(英語版)もセイボムと同様のケースがあった事を報告している。サートリは集中治療室で起こる臨死体験を5年間にわたり研究した。その結果、心停止からただ蘇生しただけで体外離脱を報告しなかった対照群の患者たちは、医師による蘇生プロセスを(TVから得られた情報などで)誤って推測したのに対して、体外離脱を報告した患者は蘇生プロセスをより正確に描写した。セイボムもほぼ同様の比較実験を行い、同じ結論を得ている。
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