伝統主義派による反論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 15:06 UTC 版)
「ハディース批判」の記事における「伝統主義派による反論」の解説
ハディースを何世代にもわたって口伝してきたために腐敗が生じたという批判に対し、伝統派は、信頼性が低いのは口伝の方ではなく、書き写された文字による伝承であると反論する。実際、口伝は「生きた証人によって証明」されない限り、「ほとんど価値のない孤立した文書よりも優れていた」とし、対する口伝の信頼性は「アラブ人の驚くべき記憶力によって保証されていた」。 伝統主義派のムスリムは、捏造ハディースの存在自体は否定しないが、ハディース学者らの功績によって、これらの捏造ハディースはほとんど排除されたと考える。ムハンマドの「スンナ」とは、ムハンマドが定めた具体的な先例をハディースとして伝えたものだけで構成されるべきだという理論の創始者であるシャーフィイー自身も、「信者は預言者に従うように命じられている」(33:21)こと、そしてクルアーンにおいても「神の使者の中に、神と最後の日に希望を持って前を向き、神をひたすら思い出すすべての人にとって、確かに良い手本がある」と記述されていることから、「神は確かにそのための手段を提供したに違いない」と主張した。 伝統主義派ムスリムは、そもそもハディース検証学は、捏造ハディースを厳密に審査する目的で確立したものであり、ハディース検証学は「これ以上の研究を必要とせず、実りある成果は今後出ない」というほどの完成度に達していると自負する。さらに彼ら伝統主義者たちは、ハディース批判者について、「正当な議論の根拠としてハディースの権威を黙認している」とし、ハディースを使用してハディースの矛盾を指摘する行為を非難する。 伝統的ハディース学問を擁護する一冊『The Evolution of a Hadith』(Iftikhar Zaman著)では、その支持者Bilal Aliによると、「過去千年にわたり、伝統派ハディース学者が実施してきたハディース批判の方法は、...現代の東洋主義的アプローチよりもはるかに科学的で正確である」と主張している。西洋のハディース批判に反論しようとした伝統派イスラム学者には、ムスタファー・アッスィバーイーとムハンマド・ムスタファー・アズミーなどがいる。 西洋の学者の中にもハラルド・モツキのように、こうした「改革主義的」アプローチ全体を批判する者がいる。米国人ムスリムのジョナサン・AC・ブラウンによれば、ジョセフ・シャハトと故G.H.A. Juynbollによる、初期のハディースと法の研究は、「小規模で恣意的な資料しか使っておらず」、「懐疑的な仮定に基づいており、それらを総合すると、あるハディースが実際にイスラム共同体の創成期にさかのぼる可能性よりもはるかに低い一連の偶然の一致を信じるよう読者に求めてることが多い」と釈明している。 伝統保守派の著名なファトワー・サイトのひとつ、ムハンマド・サーリフ・アルムナッジドが監修するサラフィー主義サイト「IslamQA」は、ハディースを「否定・拒否し続ける」者は、以下のような場合を除いて「重大な危険」にさらされると述べている。 否定するハディースの内容と、クルアーンのテキストに記載されている「意味が明確で曖昧でなく、破棄されていない」内容との間に、「完全な矛盾」を見いだすこと ハディースに「本文に記載されているような誤りにつながる可能性のある」「イスナードのつながりに弱点がある」ことを見いだすこと ハディース否定は「個人的な見解に過ぎず、正しいかもしれないし、間違っているかもしれない」
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