亜種の分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 09:38 UTC 版)
斑紋などに変異が多く、いくつかの亜種に分けられることがあるが、時期や研究者によって分け方が異なる。海産動物のデータベース「WoRMS」では下記のように2010年時点では4亜種に区分されていたが、2017年版ではそれらのうち3亜種が別種扱いとなり、ジュドウマクラには全く亜種が認められていない。また日本の代表的な貝類図鑑である「日本近海産貝類図鑑(第二版)」では、かつて日本で亜種とされることが多かったムラサキジュドウマクラを、褐色斑の少ない単なる色彩変異とし、やはり亜種は認めていない。これらも含め、以下にいくつかの分類例を挙げる。 分類例1: 海産動物のデータベース「WoRMS」の2010年版 では下記の4亜種を区別している;Oliva miniacea berti Terzer, 1986 Oliva miniacea flammeacolor Petuch & Sargent, 1986 Oliva miniacea miniacea (Röding, 1798) ジュドウマクラ Oliva miniacea tremulina Lamarck, 1811 "シリタカマクラ" 海産動物のデータベース「WoRMS」の2017年版 では、上記で分けられていた4亜種のうち berti はジュドウマクラの異名に、他はそれぞれ独立種とされており、ジュドウマクラ自体に亜種区分はないという見解が示されている。 分類例2: Hunton ら(2009)のマクラガイ属の図鑑「OLIVIDAE (Mollusca, Gastropoda)」では miniacea miniacea (ジュドウマクラ)と miniacea tremulina ("シリタカマクラ")の2亜種しか認めず、多数の学名を両亜種の異名と見なしているが、その一部には「forma (型)」として説明も加えている。以下がその概要である;Oliva miniacea miniacea (Röding, 1798) ジュドウマクラ (原名亜種) 異名は以下のとおり; aurantiaca Schumacher, 1817 azemula Duclos, 1840 berti Terzer, 1986 マーシャル諸島などの小型のもので、日本でムラサキジュドウマクラと呼ばれる型によく似る efasciata Dautzenberg, 1927 色帯の一部が消えたもの erythrostoma Lamarck, 1811 johnsoni Higgins, 1919 lamberti Jousseuaume, 1884 規則的な縦斑と明瞭な色帯が肩と中央に出るもの magnifica Ducros de Saint Germain, 1857 … 大部分黒褐色で淡色の三角斑が僅かに出るもの marrati Johnson, 1910 殻は全体に黒褐色で、そこに不明瞭な2色帯が出るもの masaris Duclos, 1835 赤橙色でぼけた斑紋があり、濃い2色帯が出るもの miniata (Link, 1870) porphyracea Perry, 1811 porphyritica Marrat, 1870 saturata Dautzenberg, 1927 斑紋が細かく、暗褐色地に明瞭な2帯が出るもの sylvia Duclos, 1845 赤橙色で明瞭な斑紋に暗色の色帯が出るもの Oliva (Miniacoliva) miniacea tremulina Lamarck, 1811 ("シリタカマクラ") 原記載:Oliva tremulina Lamarck, 1811. Détermination des espéces de Mollusques testacés. Annales du Muséum National d'Histoire Naturelle, Paris (1810), vol.16: p.310, sp.5. (インターネットアーカイブ) 特徴:ジュドウマクラより細く、殻口内が淡色-白色で橙色を帯びず、95mmをめったに超えない。 分布:インド洋(南インド、スリランカ、モルディブ、マスカリン諸島、レユニオン、マダガスカルなど) 異名は以下のとおり; flammeacolor Petuch et Sargent, 1986 fumosa Marrat, 1871 nobilis Reeve, 1850 olympiadina Duclos, 1835 白色か淡黄色で内唇-軸唇および殻口内は明白色になるもの tenebrosa Marrat, 1870 全体に黒褐色がかって斑紋がほとんどないもの zeilanica Lamarck, 1822 分類例3: 日本の代表的な貝類図鑑の『日本近海産貝類図鑑』では特に亜種などについて述べられていないが、上記の例1と例2で亜種とされている Oliva tremulina を独立種とてシリタカマクラという和名とともに掲載し、奄美・沖縄以南に分布するとしている。しかし上記の分類例2では tremulina はインド洋のみに分布するジュドウマクラの亜種としているため、両図鑑では奄美以南に見られるシリタカマクラの扱いに齟齬がある。また『日本近海産貝類図鑑』に出ているシリタカマクラは Hunon ら(2009)がタオヤカマクラの亜種とする Oliva concinna kremerorum Petuch et Sargent, 1986のホロタイプ(52.2mm)に良く似ているが、この O. c. kremerorum もタイ西岸からベンガル湾周辺までのインド洋のみに分布するとされるため、日本産のシリタカマクラの分類上の位置には不確定な部分が残されている。 分類例4: 以下は1909年の介類雑誌(本邦産介類図説(二十五) 『介類雑誌』 3 (2): p.41-46, 図版4, 図版7) に出ている分類であるが、内容が古いため実際の分類の参考にはならない。しかし複数の和名の原典となっているため、参考に示す。Oliva irisans Lam. ジュドウマクラ (図版4 図25) Oliva irisans concinna Marrat. 亜種 クチムラサキジュドウマクラ(新称) (図版7 図27) Oliva irisans tremulina Lam. 亜種 オオジュドウマクラ(新称) (図版7 図28) Oliva irisans erythrostoma Lam. 亜種 ムラサキジュドウマクラ(新称) (図版7 図29-30) Oliva sp. シリタカマクラ(新称) (図版7 図32) この分類ではジュドウマクラは4亜種に分けられ、近縁種としてシリタカマクラも一緒に図示されている。ここでジュドウマクラに充てられている irisans という学名は Huntonら (2009)の分類では、別種のヌメリマクラに充てられ、クチムラサキジュドウマクラの学名 concinna はインド洋の固有種(タオヤカマクラという和名がある)に、オオジュドウマクラの tremulina という学名はやはりインド洋のみに分布するジュドウマクラの亜種に充てられている。またムラサキジュドウマクラの erythrostoma はジュドウマクラの単なる型としてシノニムとされている。日本での分類では、クチムラサキジュドウマクラという和名はその後ほとんど使用されておらず詳細は不明、次のオオジュドウマクラは別種 Oliva sericea として扱われ、最後のムラサキジュドウマクラは21世紀でも亜種もしくは型とみなされている。またこの分類で学名不詳の独立種として新和名が提唱されたシリタカマクラは、いまだに分類が確定していないのは上記のとおりである(分類例3を参照)。
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