中国経済の減速と農民工
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 06:21 UTC 版)
2015年の中国の経済成長率は実質6.9パーセントとなり、25年ぶりの低水準となった。貿易額も2009年以来の減少となった。このような中国経済の減速のなかで、製造業の集積地として中国経済を引っ張ってきた珠江デルタにおいて、「農民工」が集まらなくなるという異変が起きている。珠江デルタ内の東莞では、2010年に月額920元(約1万6000円)だった最低賃金が2015年には月額1510元(約2万7000円)と1.6倍に、広州では1.7倍、深圳も1.8倍と高騰している。東莞では給料が払えないまま経営者が夜逃げする工場も多い。そうした情報がスマートフォンなどを通じて出稼ぎ労働者の間で広まり、さらに人を集めにくくなっている。賃金の上昇でコスト面から沿海部での操業が厳しくなった工場を、人件費の安い東南アジアのほか、中国内陸部に移転する動きも進む。例えば、東莞では、2010年に月額920元(約1万6000円)だった最低賃金が、2015年には1510元まで上昇し、人件費人削減のため内陸部に移転する工場が相次いだ。中国国家統計局によると、農民工は2015年に中国全国で約2億7700人おり、前年から比べて1.3パーセント増えた。内訳をみると故郷を離れる人の伸び率が0.4パーセントだったのに対し、地元で働く人の伸び率は2.7パーセントとなった。農民工の「地元志向」が数字にも表れている。かつて内陸部は輸送の不便さがネックだったが、2005年に4万キロメートルだった高速道路網も2014年末には約11万キロメートルと3倍近く延び、輸送上のネックも解消されつつある。中国国務院は、2016年1月に、工場移転をさらに促すため、企業活動が円滑に進められる環境整備や人材確保の施策を進めるよう、地方政府に指示した。 そして、2021年4月30日に国家統計局により発表された「2020年農民工観測調査報告」より、2008年に調査が開始されて以来、2020年は初めて農民工が減少した。減少理由は、以下の3つが考えられている。 新型コロナウイルス感染症流行による影響による移動制限などで、出稼ぎする機会が遅れた農民工がいたこと 都市化の進展により農村戸籍の人口が減少していること 農民工の教育レベルの上昇により、就学年数が長くなったため、就労機会が遅くなっていること また、特に地元を離れて出稼ぎする農民工が前年の2019年に比べ減少しており、減少要因を以下の5つあると言われている。 新型コロナウイルス感染症流行により経済悪化により、都市から離さざるえなかった農民工が多数いたこと 都市部の医療体制が農民工にとって不十分であること 一人っ子世代の農民工が地元農村から離れたがらない又は離れられないこと 都市部の住宅価格高騰などにより、生活費が農村よりかかる都市部を敬遠していること 中国政府が進める「四化(工業化、情報化、都市化、農業現代化)」を受けて、農村地域でも農業以外の業種の雇用の受け皿が増えたこと 更に、新型コロナウイルス感染症による影響を最も受けているのは農民工であり、都市発展の為にも農民工に対する公共サービスを完備することが求められていることが指摘されている。
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