ユリウス・カエサルによる火災
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「アレクサンドリア図書館」の記事における「ユリウス・カエサルによる火災」の解説
ローマの内戦最中の前48年、ユリウス・カエサルはアレクサンドリアで包囲(英語版)された。カエサルの兵士たちは自分たちの船に火を放ち、海を封鎖しているクレオパトラ7世の兄弟プトレマイオス14世の艦隊を一掃しようとした。この火は市の港に最も近い区域まで燃え広がり、かなりの被害をもたらした。1世紀のローマの劇作家でストア派の哲学者であった小セネカはリウィウスの『ローマ建国史』(前63年から前14年の間に書かれた)から、このカエサルによる火災がアレクサンドリア図書館の4万巻の巻物を破壊したという言葉を引用している。ギリシア人の新プラトン主義者プルタルコス(46年頃生-120年死)は『カエサルの生涯』において「敵は彼の海との連絡を断とうとし、彼は危険を避けるために自らの船に火をつけることを余儀なくされた。その後、火は港を焼き尽くし、そこから燃え広がってあの大図書館を破壊した」。ローマの歴史家カッシウス・ディオ(155年頃生-235年頃死)はしかし、「多くの場所で火がつけられ、その結果、他の建物伝いにドックヤード、石造りの穀物庫、そして膨大な数があったと伝えられる最高級の書物が焼けた。」と書いている。しかしながら、フロールス(英語版)とマルクス・アンナエウス・ルカヌスは、炎が艦隊を焼き尽くし、いくつかの「海に近い家々」も焼いた、とだけ言及している。 学者たちはカッシウス・ディオの著述を実際には図書館自体が燃えたのではなく、アレクサンドリア図書館が巻物を収納するために使っていたドックそばの倉庫が燃えたのだと解釈している。カエサルのつけた火がいかなる破壊をもたらしたとしても、アレクサンドリア図書館は明らかに完全な破壊は被っていない。地理学者ストラボン(前63年頃生-後24年頃死)はカエサルによる火災から数十年後の前20年頃、アレクサンドリアのムセイオンを訪問し、この大研究機関に図書館が付属していることに言及している。これは即ち、図書館は火災を生き延びたか、火災後すぐに再建されたかのどちらかであることを示している。にもかかわらず、ストラボンのムセイオンについての語り方は、それがもはや数世紀前に持っていたのと同じような名声を持っていなかったことを示している。ストラボンはムセイオンに言及するにもかかわらず、その付属図書館には個別に言及していない。おそらくこれはアレクサンドリア図書館がその規模と重要性を劇的に縮小させており、ストラボンがこれを個別に言及する必要を感じなかったことを示している。ストラボンの言及の後、ムセイオンに何が起こったのかは不明である。 また、プルタルコスの『マルクス・アントニウスの生涯』の記録によれば、前31年のアクティウムの海戦までの数年間に、マルクス・アントニウスはクレオパトラ7世にペルガモン図書館の20万巻の蔵書全てを与えたと噂された。プルタルコス自身は、この逸話について彼が用いた記録は時に信頼できないものであり、この物語はマルクス・アントニウスがローマではなくクレオパトラ7世とエジプトに対して忠実であると見せるための宣伝でしかないかもしれないと述べている。カッソンはしかし、もしこの物語が創作であるとしても、少なくともアレクサンドリア図書館が未だ存在していたことは信じられると主張している。 アレクサンドリア図書館が前48年後も残っていたさらなる証拠は、前1世紀末から後1世紀前半の間の総合的注解(composite commentaries)の最も特筆すべき作成者が、アレクサンドリアで研究していたディデュモス・カラケンテロス(英語版)という学者であったという事実である(彼の綽名は「銅の気概」Χαλκέντερος、Chalkénterosという意味である)。ディデュモスは3500から4000もの本を作り、全ての古代の著作家の中で最も著名になったと言われている。彼はまた、「本を忘却する者」という意味のビブリオラテス(βιβλιολάθης、Biblioláthēs)という綽名も与えられている。なぜならば、彼自身でさえ自分の書いた全ての本を思い出すことができなかったと言われているからである。ディデュモスのいくつかの注解の一部は後世の抜粋の形で現存しており、これらは現代の学者にとっても、それ以前にアレクサンドリア図書館にいた学者たちの批評作品についての最も重要な情報源である。ライオネル・カッソンはディデュモスの驚異的な著作数は「彼が図書館史料の大部分を自由に利用できなければ不可能であっただろう」と述べている。
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