メアリー・ホワイトハウス関連事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 22:02 UTC 版)
「ジョン・モーティマー」の記事における「メアリー・ホワイトハウス関連事件」の解説
メアリー・ホワイトハウス(英語版)は、私人訴追を通じ、あらゆる法令を駆使して性的な表現その他反教育的・反キリスト的と考える表現を次々と攻撃対象とした教育家・保守活動家であり、その訴訟狂ぶりから「Director of Private Prosecutions」(私訴局長官)とも揶揄された人物である。モーティマーも、ホワイトハウスが関与した事件の弁護を複数担当している。 1971年、モーティマーは当時英米カウンターカルチャーの象徴的な存在であったアングラ系雑誌オズ(英語版)の編集者らの弁護を手掛けた。これは、同誌が若年層の視点を取り込むために14~18歳の未成年者を抽出して編集を好き勝手にやらせたところ、クマのルパートを登場人物に加工したポルノコミックなどけしからん内容満載になってしまい、これを同誌28号「Schoolkids Oz」として出版した結果、若者の道徳を腐敗・堕落させようと共謀したとしてホワイトハウスによって共謀罪、わいせつ記事を郵送したとして1953年郵便法及びわいせつ物出版法で訴追されたという事案である。モーティマーによる初日の冒頭陳述の一部 This case stands at the crossroads of our liberty, at the boundaries of our freedom to think and draw and write what we please.(本件は、我々の自由権にとっての岐路、好きなことを考え、描き、書く自由にとっての境界線上に立つものです) は、本件について論じる際、しばしば引用される。審理では、被告人らのためにロナルド・ドウォーキン等100人を超える著名人らから陳述書が集められ、マーティ・フェルドマンやジョージ・メリー(英語版)らが弁護側鑑定証人として証言を行った。しかし、これらの著名な鑑定証人も本人の性生活に関して尋問されるなど侮辱的な扱いを受けた上、裁判官は、出版物が単に不快であったりショックを受けるようなものというだけでは足りず、「腐敗」や「堕落」させると認められるものでなければならないとされているところ、その点について陪審に対して露骨に要件と異なる誘導を行った。そして、共謀罪については否定されたものの、その余の軽微な犯罪について成立が認定され、各被告人に対して9~15か月の実刑判決が言い渡されたが、控訴審では第一審での手続の違法が認定されて原判決は破棄され、その後無罪判決が確定した。モーティマーは、その第一審裁判官について「大ばか」で「まさに道化」だったと後に評価している。 1976年には、ジェイムズ・カーカップの作品『The Love That Dares to Speak Its Name』(あえてその名を呼ばわる愛)を掲載したことでホワイトハウスから訴追されたタブロイド紙ゲイ・ニュース(英語版)及びその編集者デニス・レモンの事件の弁護を担当した(ホワイトハウス対レモン事件(英語版))。ホワイトハウスは、1949年の時点においてすら既に死文化していると考えられていたコモン・ロー上の冒涜的誹謗罪(Blasphemous libel)を構成するとして代理人を通じて私人訴追の手続を行った。そのオールド・ベイリーにおける手続では、モーティマーら弁護側代理人の請求する証拠のほとんどが裁判官によって採用を却下され、被告人であるレモンすらも出版の意図について供述が許されなかった。そして、被告人らそれぞれに対して罰金刑、レモンについてはさらに執行猶予付懲役刑が言い渡された。その上訴審においては有罪判決と量刑のいずれもが争われ、量刑については懲役刑になじまないとして破棄される。しかし、犯罪の成立については犯罪の主観的要件(mens rea)としてその意図(intention)の内容に争点が絞られたものの、冒涜的な物を出版する意図があれば足り、冒涜する意図までは不要とされたため判断は覆らず、欧州人権裁判所においても同様であった。 モーティマーが弁護を担当したその他のものとしては、性交・ドラッグ等について記載されたデンマークの児童向け教育本『チビっ子猛語録(英語版)』を出版したイギリスの出版者を被告人とした事件や、『ディープ・スロート』のポルノ女優リンダ・ラヴレースの自伝『Inside Linda Lovelace』の出版者を被告人とした事件がある。
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