マラリアの媒介昆虫としての寄与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/22 15:37 UTC 版)
「オオツルハマダラカ」の記事における「マラリアの媒介昆虫としての寄与」の解説
フィリピンの A. lesteri lesteri については、マラリア媒介の役割が、否定されている。 後に独立種とされたマレー半島、タイ、スマトラの A. paraliae についても、マラリア媒介の役割が、否定されている。 中国安徽省の調査では、A. lesteri anthropophagus(当時 A. lesteri 型とされていた)のスポロゾイト保有率は、シナハマダラカよりも、格段に高率であり、人血嗜好性も大変、強かった。なお、スポロゾイトとは、マラリア原虫の胞子が殻の中で分裂して外に出たものである。 また、前述したように、A. lesteri anthropophagus に対する三日熱マラリア原虫感染実験、熱帯熱マラリア原虫感染実験では、両者とも、感染した。 したがって、中国中南部の A. lesteri anthropophagus は、マラリア媒介能力が高い。 第二次世界大戦後、日本では、沼沢の埋め立てなどの土地改良事業や開発が進むにつれ、シナハマダラカよりもオオツルハマダラカのほうが特に大きな影響をこうむり、減少したといわれている。 そして、九州以北の日本列島での三日熱マラリア感染者は、1950年頃から、激減し始めた。 さらに、前述したように、オオツルハマダラカの人血嗜好性は、シナハマダラカより強い。 以上より、九州以北の日本列島で、かつて、土着の三日熱マラリアが蔓延していたときの主要な媒介蚊は、オオツルハマダラカだった可能性が高いと考えられている。 そして、九州以北の日本列島では、下記の熱帯熱マラリア感染(流行)が記録されている。ただし、血液塗抹標本で熱帯熱マラリア原虫が確認されたものだけを挙げた。 北海道留辺蘂町の山脚部(1946年(昭和21年)5月 – 1947年(昭和22年)5月。発病:7名。そのうち、死者:1名。ただし、実際にはこれよりもはるかに大規模な流行と思われる) 愛知県海部郡鍋田村の平地(海岸)(1946年(昭和21年)9~10月発病。10歳男児。1名) 大阪府豊能郡池田市の平地(1946年(昭和21年)11月発病。35歳女性。1名) 岡山県吉備郡総社町の平地(1946年(昭和21年)5月発病。19歳男性。1名) 福岡県遠賀郡芦屋町の平地(海岸)(1943年(昭和18年)12月発病。24歳女性。1名) 福岡県嘉穂郡稲築町の山脚地(1949年(昭和24年)4月発病。生後11ヶ月男児。1名) 長崎県佐世保市の盆地(1946年(昭和21年)7月~9月初診。36名) 熊本県八代郡千丁村の平地(1946年(昭和21年)9月初診。24歳女性。1名) 鹿児島県始良郡霧島村の山脚地(1946年(昭和21年)9月初診。37歳男性。1名) 鹿児島県肝属郡東串良町の平地(1946年(昭和21年)10月初診。61歳男性。1名) シナハマダラカに熱帯熱マラリア原虫の媒介能力がないこと・日本のオオツルハマダラカと近縁ではないかといわれているA. lesteri anthropophagusには、熱帯熱マラリア原虫媒介能力があることから、オオツルハマダラカが、上記の熱帯熱マラリア伝播をした蚊として、有力視されている。
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