マスコミによる容疑者・被告の使用例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 01:52 UTC 版)
「無罪推定の原則」の記事における「マスコミによる容疑者・被告の使用例」の解説
「容疑者」の呼称は原則として逮捕された被疑者にしか用いられていないが、時折、一部もしくは大半のマスメディア(特にキー局)やNHKでは「容疑者(被疑者) = 有罪(犯罪者)」と決めつけられることによるイメージダウンを避けるべく、一部の有名人または職業に限り「○○容疑者」の呼称を用いない場合がある。 例としてSMAPの稲垣吾郎が、2001年8月に駐車違反を巡る道路交通法違反と公務執行妨害罪で逮捕された事案に関して、新聞は「稲垣容疑者」と呼称したが、特に、フジテレビは「稲垣メンバー」とした。 また、島田紳助が2004年11月に、当時自身が所属していた吉本興業の女性マネージャーの首を殴って頸椎に捻挫を負わせたとして傷害罪で書類送検された事案に関して、「島田紳助容疑者」との呼称を用いられたり、「島田紳助氏」、「島田紳助さん」に加え「島田紳助司会者」、「島田紳助(所属)タレント」などの呼称が用いられ、メディアによって呼称が分かれた。 これらの事例について、読売テレビアナウンサーの道浦俊彦は、自身のコラムで「『メンバー』などの不自然な呼称を付けるのは、実名に肩書きを付けて報道するのが原則の在宅捜査に切り替わるにあたり、適当な呼称が存在しないからであり、芸能プロの圧力ではない」と述べている。 2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件の首謀者とされるオサマ・ビンラディンは、同事件の被疑者として国際指名手配されている際に「ビンラディン氏」と敬称付きで報道されてきたが、かねてからジョージ・W・ブッシュ政権を全面的に支持する姿勢を鮮明にしていた『読売新聞』はいち早く「(ウサマ・)ビンラーディン」と呼び捨てで報道し、2004年10月29日にビンラディンがビデオで同事件への関与を認めると、マスメディアは一斉に「ビンラディン容疑者」に変更した。さらに『読売新聞』は、ビンラディンと同じく反米の急先鋒的存在だった旧イラク共和国最後の大統領サッダーム・フセインも「(サダム・)フセイン」と呼び捨てで報道しており、G.W.ブッシュ政権に対する熱烈な支持およびフセイン政権に対する強い敵意をはっきりと示唆していた。その一方で同新聞は、同じく反米敵対姿勢を明確に打ち出しているISILの指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーについては「(アブバクル・)バグダーディ容疑者」と呼び捨てせずに報道している。 また、容疑者は呼び捨てにされるのが一般的だったロッキード事件の頃に、田中角栄が「田中元首相」と「容疑者」ですらなく他の首相経験者と同様の表記をされていた例がある。 公共放送のNHKにおいても、会社社長、役員、公務員(警察官、自治体職員など)明確な役職を持っている(持っていた)被疑者・被告人に関して、最初に「会社社長の○○容疑者」と呼び、その後、辞職(辞任)・懲戒解雇(懲戒免職)された場合は一貫して「○○(元)社長」、「○○(元)巡査」「元○○で無職」のように「役職」(肩書き)をつけて報道することがしばしばみられる。被疑者が無職または専業主婦・自営業・平社員(またはフリーター)など適当な役職名がつけられない場合は従来通り「○○容疑者」の呼称のみを用いている。また居住地を持っていても逮捕時は「○○在住の△△(職業)、××容疑者」と報じられても起訴時は「住所不定無職(あるいは元△△)、××被告」と報じられることもある。
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