フェルミのパラドックスへの影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 14:35 UTC 版)
「自己複製宇宙機」の記事における「フェルミのパラドックスへの影響」の解説
1981年に数理物理学者フランク・ティプラー は人類以外の文明による自己複製宇宙機が発見されないことに基づき、地球外文明が存在しないと主張し、議論が巻き起こった。中程度の複製速度と銀河の長い歴史さえあれば、そのような自己複製宇宙機が宇宙全体に広まっているはずであり、したがって人類はすでに地球外文明の自己複製宇宙機に遭遇しているはずである。しかし、人類は未だに自己複製宇宙機と遭遇していないため、これは地球外に知性が存在しないことを示していると主張した。これは、なぜ人類は地球外文明に出会っていないのかというフェルミのパラドックスへの回答でもある。 この主張に対し、天文学者のカール・セーガンとウィリアム・ニューマンが後にセーガンレスポンス(Sagan's Response)として知られる意見で反論した。まず、ティプラーは複製速度を過小評価していると指摘した。指数関数的に複製し続ける自己複製機械は銀河の全質量を200万年以内に消費しきる可能性がある。このような機械を作れるのに十分な知性を持つ種族はそのような危険性を鑑み、そもそも自己複製機械を作ることはないだろうと主張した。偶然または悪意によってそのような自己複製機械が宇宙に放たれてしまった場合には、「感染」が広がる前に止めることが他の責任ある文明の義務だと述べた。ロバート・フレイタスは逆に、討論の互いの説に登場する複製速度と数量はあまり現実的な数値ではないと指摘した。 自己複製宇宙機の普及に対するもう1つの反論は、そのような機械を作成する可能性がある文明は、資源の枯渇、生態学的大災害、パンデミック、生物兵器の拡散、核戦争、グレイグーなどが起こり、高度な文明の階梯に到達する前に崩壊する可能性がある。 制御できない指数関数的な複製による宇宙資源の浪費シナリオを回避するための簡単な回避策はいくつかある。無線通信などを用いて過剰な複製を制限する他に、一定の濃度を超えて複製しないようにプログラムするといった手段が考えられる。例えば「1立方パーセクあたり5つの探査機まで」や「1世紀以内に1千万まで」など。これらは細胞の再生におけるヘイフリック限界に似ている。この対策の問題の1つは、誤動作を起こした探査機を検出し、捜索および破棄プロトコルを実装しない限り、誤動作を起こした探査機の無制限の複製を止められないことである。誤動作を起こした探査機が一定数以上に増加した場合、探査機同士の戦争につながる可能性がある。 他の回避策は、長期の星間移動中の宇宙船の燃料の必要性に基づいている。燃料にプルトニウムなどを使用すると、自己複製する能力が制限される。宇宙船に必要な原材料が見つかったとしても、より多くのプルトニウムを作るためのプログラミングは存在しない。他には、制御不能な複製の危険性を明確に理解して自己複製宇宙機をプログラムすることなどがある。
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