フェルマー計量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:05 UTC 版)
リンドラーチャート上では、任意の空間的超断面上に投影したヌル測地線が単純に半円状の弧になることは、上に示した一般解から直接確かめることができるが、これを示す非常に単純な方法がある。静的時空(英語版)とは、渦なしの時間的キリングベクトル場が存在する時空である。このとき、(慣性運動しているとは限らない)対応する定常観測者に直交する一連の(同一)空間的超断面を一意に定義することができる。このことから、これら任意の超断面上に、時空から受け継いだ元の計量に共形に関連付けられる新しい計量を、その計量(これは三次元リーマン多様体上のリーマン計量であることに注意)の測地線が時空のヌル測地線の投影と正に一致するような性質を持つように定義することができる。この新しい計量は「フェルマー計量」と呼ばれ、線素が d s 2 = g 00 d t 2 + g j k d x j d x k , j , k ∈ { 1 , 2 , 3 } {\displaystyle \mathrm {d} s^{2}=g_{00}\,\mathrm {d} t^{2}+g_{jk}\,\mathrm {d} x^{j}\,\mathrm {d} x^{k},\;\;j,\;k\in \{1,2,3\}} で与えられるような座標系が付与されている定常時空では、 t = 0 におけるフェルマー計量は単純に d ρ 2 = 1 − g 00 ( g j k d x j d x k ) {\displaystyle \mathrm {d} \rho ^{2}={\frac {1}{-g_{00}}}\left(g_{jk}\,\mathrm {d} x^{j}\,\mathrm {d} x^{k}\right)} となる(ここで、計量の係数は t = 0 で評価されたものとする)。 リンドラーチャートでは、時間的並進 ∂t が上述の時間的キリングベクトルであるから、これは定常時空である(これはミンコフスキー時空がアインシュタイン方程式の自明な静的真空解であることからも驚くべきことではない)。したがって、リンドラー観測者のフェルマー計量は直ちに以下のように書ける。 d ρ 2 = 1 x 2 ( d x 2 + d y 2 + d z 2 ) , ∀ x > 0 , ∀ y , z {\displaystyle \mathrm {d} \rho ^{2}={\frac {1}{x^{2}}}\left(\mathrm {d} x^{2}+\mathrm {d} y^{2}+\mathrm {d} z^{2}\right),\;\;^{\forall }x>0,\;\;^{\forall }y,z} しかし、これはよく知られた「三次元双曲空間」 H3 の上半空間チャートにおける線素である。これは、複素解析の学生が代々「共形写像問題」(とその他多くの問題)に関連して習わされる、よく知られた双曲平面 H2 の上半平面チャートにごく似ており、多くの数学に関心のある読者にとっては H2 の測地線が単に(実軸で表わされる無限大を中心とする円に直交する)半円になることは既知であろう。
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