ドバイシーマクラシック制覇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:16 UTC 版)
「ステイゴールド」の記事における「ドバイシーマクラシック制覇」の解説
翌2001年、この年の初戦は当初前年と同じくアメリカジョッキークラブカップが予定されていたが、陣営は1週前に行われるハンデキャップ競走の日経新春杯も視野に入れて登録を行っていた。その後、日経新春杯におけるハンデが58.5kgと発表され、これによって陣営は迷った末に急遽日経新春杯への出走を決定した。このレースは藤田伸二が鞍上を務め、トップハンデを背負った馬は苦戦しているレースの傾向とステイゴールドの勝ちきれないレースぶりが敬遠されたのか11頭立ての5番人気という低評価で臨んだが、道中は好位の内で末脚を温存し、そのままインをついた直線では逃げ粘るサンエムエックスを鋭く捉え、重賞2勝目を挙げた。日経新春杯後の3月、厩舎の僚馬トゥザヴィクトリーらと共にアラブ首長国連邦のドバイへ遠征が決定。早くからトゥザヴィクトリーにはドバイ遠征が計画されていたが、トゥザヴィクトリーを遠征させるなら帯同馬も連れて行った方がいいという陣営の考えの中で、そのエスコート役としてステイゴールドに白羽の矢が立てられ、池江が社台グループに「ステイゴールドをドバイに連れて行きたい」という申し出を行ったところ快諾されたためステイゴールドもドバイへの遠征が決定した。 ドバイへの移動に際しては、成田国際空港の検疫所を出発してからドバイに着くまでの輸送時間は経由地の香港での待ち時間(約9時間)も含めて約30時間に及び、機内で腹痛を起こす危険性を考慮してその間に与えられたのは水と少量の牧草のみであったため、この輸送で消耗してしまったステイゴールドはドバイに着いてからもカイ食いがなかなか回復せず、馬体も減らしてしまう。このような状況の中で、世界最高賞金開催であるドバイミーティングの一競走・ドバイシーマクラシック(GII)へ武豊を鞍上に出走した。 このレースで注目を集めていたのは前年覇者の地元UAEのエースであるファンタスティックライト(鞍上ランフランコ・デットーリ)だった。同馬は4歳のシーズンを迎えた前年の2000年に本格化し、当時はGIII格付けだったドバイシーマクラシックで英ダービー馬のハイライズや凱旋門賞馬のサガミックスを相手に3馬身差の勝利を飾ると、コロネーションカップでは1999年の英ダービー2着馬ダリアプールの2着、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスでは1999年の凱旋門賞馬モンジューの2着に敗れた後アメリカへ転戦し、マンノウォーステークスでGI初制覇。その後目標に掲げていたブリーダーズカップ・ターフでは直線で前が塞がる不利が響いて5着に敗れたものの、続けて出走したジャパンカップではテイエムオペラオー、メイショウドトウと横一列の叩き合いを演じて僅差の3着に食い下がっている。さらに暮れの香港カップでは好位追走から抜け出して2つ目のGI制覇を達成し、この勝利によって同年の「エミレーツワールドシリーズレーシングチャンピオン」の2代目王者に輝いていた。ファンタスティックライトに次ぐ存在として見られていたのが先のコロネーションカップの勝ち馬で暮れの香港ヴァーズでも勝利を飾ったダリアプールであり、当日イギリスの大手ブックメーカーがつけた単勝オッズはファンタスティックライトが2.7倍の一番人気、ダリアプールは6倍で、三番人気にはイタリアのGIミラノ大賞典の勝ち馬エンドレスホールと欧米のGIで3勝の実績を持つムタファーウエクが8倍で並び、ステイゴールドは16頭立ての10番人気、単勝オッズは34倍でブービー人気のグループに入っていた。 レースでは6番枠から好スタートを切って武が馬を内へ導くと中団馬群のインにつき、ファンタスティックライトが走っているポジションで末脚を温存。最後の直線に向いてからは前がやや壁になるシーンもあったものの、スペースが開いた隙を見逃さずに外へ持ち出して加速にかかると、並んで伸びたドイツのシルヴァノを振り切り、先に抜け出していたファンタスティックライトを猛追し、並びかけたところでゴールした。審議の結果、決勝写真にはステイゴールドの鼻先がファンタスティックライトよりもわずかに早くゴールラインを捉えた瞬間が映し出され、ステイゴールドの優勝が決定した。日本産の日本調教馬による海外重賞制覇はハクチカラ、フジヤマケンザンに続いて史上3頭目であり、サンデーサイレンス産駒の日本調教馬として初の国外重賞初勝利でもあった。武は「日本でなかなか勝てなかったのに、こうやってステイゴールドが大きなところを勝ったこと、それから日本のサンデーサイレンス産駒がやっと海外で勝ったこと、これは日本の競馬の歴史を変えるできごとで、今後大きな意味を持ってくると思います」と語った。なお、2着に敗れたファンタスティックライトはこの年2年連続でエミレーツワールドシリーズレーシングチャンピオンの座に君臨し、のみならず欧州の年度代表馬、アメリカの芝のチャンピオンにも選出された。
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