トロンヒューマンインタフェース仕様
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 00:21 UTC 版)
「TRONプロジェクト」の記事における「トロンヒューマンインタフェース仕様」の解説
TRONにおけるヒューマンインタフェース仕様の策定を行うサブプロジェクト。略称は「トロンHMI仕様」、あるいは「トロン作法」ともいう。 1990年発足の「TRON電子機器HMI研究会」が中心となって策定した。トロンアーキテクチャが考える電子機器や家電製品などのヒューマンインターフェイスの仕様を提示したもので、その成果は1993年に『トロンヒューマンインタフェース標準ハンドブック』として書籍化され市販された。 1990年当時、炊飯器や扇風機など様々な電化製品がマイコンや液晶パネルを搭載するようになるなど高機能化していたが、必ずしも使いやすくなったわけでは無く、操作が複雑化するなどして、逆に使いづらくなる場合もあった。TRONプロジェクトの最終目標である「電脳社会」「どこでもコンピュータ」が実現すると、人間は社会においてどこでも多くの電子機器に囲まれている環境になるが、コンピュータがいくら高度な機能やサービスを提供できたとしても、人間がそれを享受できないようでは意味がない。それぞれの機器において「理想的」なデザインを採用しているよりも、全ての機器において統一的なデザインを採用していた方が、一つの機器の使い方を覚えると他の機器でも同じように操作できるようになるので、ユーザーにとって使いやすく利点が大きい。そのような観点から、コンピュータから家電まであらゆるモノにおいて統一的な操作方法を提供する、トロンアーキテクチャにおけるインターフェイスの標準化と、ガイドラインの策定が行われた。 トロンHMI仕様においては、「一貫性のある操作体系の提供」、HMI仕様を満たした機器が誰にでも使用できるような「電子技術への平等なアクセスの提供」、その仕様がいつでもどこでも何にでも使用できるような「広い適用性」、ユーザーの誤動作や機器の誤動作を防止する「安全性の確保」、以上の目的を達成するための「最低限の品質保証」、の5つが重視された。そのために、HMI仕様を満たすために必ず守るべき「事項」と、HMI仕様をより良くするためになるべく満たすことが望ましい「指針(ガイドライン)」に分け、全てのガイドラインを満たすのが難しい状況においてどのガイドラインを採用するべきか、の判断を手助けするためにハンドブックが役立てられた。 トロンHMI仕様においては、ディスプレイを用いたGUIと、物理的なデバイスなどを用いたSUI(ソリッド・ユーザー・インターフェイス)が規定され、双方における操作の一貫性が保証された。また、トロンHMI仕様を採用した複数の機器において操作の手順を一貫させるため、単に個別のパーツやレイアウトを標準化するのではなく、複数のパーツにおいて操作を標準化するという「抽象度の高い標準化」が行われた。例えば当時ユーザーが扱うのに特に困難なものと考えれられていた、時刻を設定する「タイマー」の設定の標準化も行われ、例えばビデオと炊飯器のタイマーの操作を一貫させるため、通電開始時刻ではなく録画開始時刻や炊き上がり時刻を設定することが規定された。 誰もが使いやすいデザインとして、身体が不自由な人や、海外の人でも使いやすいデザインとなるように、デザイナーに注意を促した。TRON仕様を満たした家電製品は、海外にも盛んに輸出され、1990年代以降の日本の家電輸出産業を支えた。
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