トロンビンの活性化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 02:46 UTC 版)
「プロトロンビナーゼ」の記事における「トロンビンの活性化」の解説
完全に組み立てられたプロトロンビナーゼ複合体は、酵素前駆体型のプロトロンビンからセリンプロテアーゼのトロンビンへの変換を行う。具体的には、第Xa因子はプロトロンビンを2か所(ヒトの場合Arg271とArg320の直後)で切断する。切断は2度起こるため、プロトロンビンの活性化は2つの経路で進行する。一方の経路では、プロトロンビンはまずArg271で切断される。この切断によって、最初の271残基からなるフラグメント1.2と、272–579番残基からなる中間体プレトロンビン2(prethrombin 2)が産生される。フラグメント1.2は活性化ペプチドとして放出され、プレトロンビン2はArg320で切断されて活性型のトロンビンとなる。Arg320での切断後に形成される2本の鎖はA鎖、B鎖と呼ばれ、活性型トロンビンでは両者はジスルフィド結合によって連結されている。もう一方の経路では、プロトロンビンはまずArg320で切断され、メイゾトロンビン(meizothrombin)と呼ばれる触媒活性を持つ中間体が産生される。メイゾトロンビンはフラグメント1.2-A鎖がB鎖にジスルフィド結合で連結されている。その後メイゾトロンビンは第Xa因子によってArg320での切断が行われ、フラグメント1.2と、A鎖とB鎖がジスルフィド結合で連結された活性型トロンビンが生じる。トロンビンが第Xa因子のみによって生成される場合は前者の経路が支配的であり、プロトロンビンはまずArg271で切断されてプレトロンビン2が生じ、その後Arg320で切断される。しかし、第Xa因子がプロトロンビナーゼ複合体の構成要素として作用する場合は後者の経路が好まれるようになり、プロトロンビンはまずArg320で切断されてメイゾトロンビンが生じ、Arg271で切断されて活性型トロンビンが産生される。このように、プロトロンビナーゼ複合体の形成は、プロトロンビンの切断の順序を変化させる。
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