チーム編成の方法論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 16:18 UTC 版)
「マネー・ボール」の記事における「チーム編成の方法論」の解説
低年俸選手 アスレチックスが獲得する選手の多くは、他球団から「欠陥品」「傷物」と見なされ評価を落としたことで、獲得競争を要せず低コストでの獲得が可能となった選手であった。このような「欠陥」はあくまで他球団の価値基準によるものであり、アスレチックスの基準においてはその全てが必ずしも問題になるとは限らず、前述の能力を有してさえいればこれらの欠陥はほとんど問題にされない。 例えば、ボストン・レッドソックスの捕手だったスコット・ハッテバーグは、利き腕に捕手としては致命的な怪我を負ったため選手生命は絶望的と評価されていたが、出塁率の高さに注目したアスレチックスが一塁手として獲得した結果、主軸打者として活躍した。選手が競技者として致命的な怪我を負い復帰した直後は、市場価値が急落しているために交渉しやすいことが利点となる。 また、実績が無いながら前述の要素を満たしている若手選手を年俸が高騰する前に見出して積極的に起用し、反対に能力・年棒ともに下り坂であるベテラン選手も獲得した。ドラフトにおいても代理人(エージェント)の付くスターアマチュア選手は契約金が高くなるため、代理人の付いていない選手を優先した。 複数年契約 有望な若手選手とは、年俸調停権やFA権の取得といった年俸の高騰が予想される選手としての節目を迎える前の早い時期から複数年契約を結ぶことで年俸を抑制した。特にティム・ハドソン、バリー・ジート、マーク・マルダーの先発投手「ビッグ3」は成績に対しての年俸が低く、コストパフォーマンスが極めて高かったと言える。FA権を取得すると年俸が必然的に上がるため、この3名についてもFA権取得と同時に放出した。 FA、トレード 年俸が高くなると判断した選手については躊躇なくトレードに出し、FA権を取得した選手もほとんど引き止めることなく放出するのも特徴である。トレードの場合、獲得するのは原則として前述の要素を満たしている若手の選手である。前述の要素は他球団では年俸に反映されることがあまりない上、実績のない若手であればさらに低い移籍金での獲得が可能となる場合が多い。FA移籍については、FA権を用いて選手が他球団へ移籍すればドラフト指名権が優遇され有望な若手選手の獲得が容易となることもFA選手の放出に躊躇わない理由である。 また、前述の通り「重要視されない要素」の多くが従来の価値基準を持つ他球団では評価されるものであったことから、「アスレチックスから見れば価値は低いが、他球団であれば高評価するであろう要素を持つ選手」を高額の移籍金で売り飛ばすという方法で運営資金を獲得した。この手法は作中では「がらくたを押しつける」と表現された。 FA移籍などで主力選手を手放した場合は、その選手の能力を細分化しそれぞれの能力を有した複数の選手を獲得・運用することでその穴を埋めた。例えばジェイソン・ジアンビ、ジョニー・デイモンらの移籍に伴っては、ジェイソンの弟・ジェレミー、スコット・ハッテバーグ、デビッド・ジャスティスと出塁能力に優れた3人を獲得した。 スカウティング、ドラフト ビーンのGM就任当初のアクレチックスでは、スカウトの選手を判断する基準が主観的(「この選手は伸びる」「才能を秘めている」など)であったことや、元選手のスカウトが選手時代の経験に基づいて判断を行っていたことから、スカウティングの不確実性や戦略立てて選手を獲得出来ないという欠点を抱えており、ビーンの就任後もスカウト陣が閉鎖的・前時代的な価値観を捨てられず、ビーンの方針にそぐわなかったため大半を解雇した。 その後は、旧来的な「スカウトの暗黙知(経験や勘)」による選手評価を全否定し、客観的データ主義を徹底。体格やバッティング・ピッチングフォームなどの外見の他、「将来性」といったようなデータで証明できない曖昧な要素も考慮せず、あくまで前述の要素を満たす即戦力の選手を獲得することに注力した。 データ重視のスカウティングのため、「試合数が多くデータの絶対量が多い」「対戦相手のレベルに差が生まれにくくデータの信頼度が高い」といった点からも大学生選手の獲得が優先され、必然的に高校生選手の指名は避けられることとなった。 選手の身辺調査・素行調査も行い、本人の言動・交友関係・家族の犯罪歴の有無などから将来悪影響を及ぼす可能性があると判断した選手は徹底して獲得候補から排除した。
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