チェレンコフ検出器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:04 UTC 版)
「ニュートリノ検出器」の記事における「チェレンコフ検出器」の解説
「リングイメージング」チェレンコフ検出器は、チェレンコフ光と呼ばれる現象を利用している。チェレンコフ放射は、電子やミュオンのような荷電粒子が検出器の媒質中をその媒質における光速よりも速く移動するときに常に発生する。チェレンコフ検出器では、大量の水または氷のような透明な物質が光を感知する光電子増倍管で取り囲まれている。十分なエネルギーを持って生成され、このような検出器中を移動する荷電レプトンは、検出器媒体中における光速より速く(ただし、真空中における光速よりは遅く)進む。このような荷電レプトンは、チェレンコフ放射により観測可能な「光の衝撃波」を生み出す。この放射は光電子増倍管によって検出され、光電子増倍管配列上に特徴的なリング状パターンとして現れる。ニュートリノは原子核と相互作用し、チェレンコフ放射を発する荷電レプトンを生成することができるので、このパターンを使って、入射ニュートリノの方向、エネルギーそして(場合によっては)フレーバーの情報を推測することができる。 2つの水を充填したこのタイプの検出器(カミオカンデとIMB)が超新星SN1987Aからのニュートリノバーストを記録した。科学者は大マゼラン雲内の星の爆発による19個のニュートリノ(超新星爆発によって放出された多量のニュートリノのうち19個のみ)を検出した。カミオカンデ検出器はこの超新星に伴うニュートリノバーストを検出することに成功し、1988年には太陽ニュートリノの生成を直接確認するために利用された。このような水を充填した検出器で最大のものはスーパーカミオカンデである。この検出器は11,000個の光電子増倍管に取り囲まれた50,000トンの純水を使用し、地下1kmに位置している。 サドベリー・ニュートリノ天文台 (SNO)は、1,000トンの超純度の重水が入った直径12メートルのアクリル酸プラスチック容器が直径22メートル、高さ34メートルの通常の超純水の円柱で取り囲まれたものを用いている。通常の水検出器でニュートリノ相互作用を見ることができるのに加えて、ニュートリノは重水中の重水素を分解することができる。結果として生じる自由中性子が、その後に捕獲され、検出可能なガンマ線バーストを放出する。3つすべてのフレーバーのニュートリノが等しくこの分離反応に寄与する。 MiniBooNE検出器は純粋な鉱油を検出媒体として採用している。鉱油は天然のシンチレータなので、チェレンコフ光を生成するのに十分なエネルギーを持っていない荷電粒子であっても、シンチレーション光を生成することができる。水中では見ることのできない低エネルギーのミュオンや陽子を検出することができる。 地中海の深さ約2.5kmに位置するANTARES(Astronomy with Neutrino Telescope and Abyss environmental RESearch)は2008年5月30日に完全に作動した。70メートル間隔で離れて配置された、12個の縦350メートルの検出器の糸からなり、それぞれ75個の光電子増倍管の光学モジュールを持つ。この検出器は周辺の海水を検出媒体として用いている。次世代の深海ニュートリノ望遠鏡KM3NeTの全装置体積は約5 km3となる予定である。検出器は地中海の3つの設置場所に分散される予定である。実施の第一段階は2013年より開始している。 Antarctic Muon And Neutrino Detector Array (AMANDA)は1996年から2004年まで稼働した。この検出器は南極点付近の南極氷河の深部(1.5-2km)に埋めた糸に装置した光電子増倍管を用いた。氷自体が検出媒体である。入射ニュートリノ方向はそれぞれが1つの光電子増倍管を持つ検出器モジュールの3次元的な配列を用いて個々の光子が到達する時間を記録することによって特定された。この方法で50GeV以上のニュートリノを空間分解能約2℃で検出することができる。AMANDAは北天の地球外ニュートリノ源検索のためのニュートリノのマップを作成し、暗黒物質を探索するために使用された。AMANDAは現在、IceCube観測所に更新され、最終的に検出器配列の体積を1立方キロメートルに増やしている。
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