カミオカンデとは? わかりやすく解説

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カミオカンデ(かみおかんで)

岐阜県神岡鉱山にある素粒子巨大観測装置

大量純水巨大タンク中に蓄え素粒子反応することによって発生するチェレンコフ放射光をその周り取り囲む光センサー捕らえる。宇宙線などの余計なノイズ抑えるため、鉱山地下深いところに建設されている。

もともと、カミオカンデは、陽子の崩壊事象調べ実験 (Neucleon Decay Experiment) に使われていた。ところが、1987年に、超新星爆発により大量発生したニュートリノ偶然に感知し話題となったこともある。現在では、主にニュートリノ検出器 (Neutrino Detection Experiment) として、水量5万トン級のスーパーカミオカンデ稼動している。

スーパーカミオカンデは、大気中で発生するニュートリノ太陽中心部生成されるニュートリノ、または粒子加速器使って人工的に作られニュートリノ検出するなど、基礎科学分野世界リードしていると言える

次世代となるハイパーカミオカンデは、さらに水量20倍の規模とする構想まとまり当初探していた陽子の崩壊事象について、もっと精密に調べる。この現象は、理論的に予言されいながらいまだにつかっていないので、世界中で注目されている

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(2001.01.17更新


カミオカンデ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/14 02:07 UTC 版)

カミオカンデ模型

カミオカンデKAMIOKANDE)は、陽子崩壊ならびにニュートリノを観測するために、岐阜県神岡鉱山地下1000mに存在した観測装置。KAMIOKANDEという名称はKamioka Nucleon Decay Experiment(神岡核子崩壊実験)に由来し、2015年ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章によれば「東大(理)が光電子増倍管とエレクトロニクスを担当、高エネルギー物理学研究所(現・高エネルギー加速器研究機構)がタンクと純水装置を担当、東京大学宇宙線研究所が空洞掘削を担当」など、分担して建設された[1]。 1996年にスーパーカミオカンデが稼動したことによりその役目を終えた。跡地にはカムランドが建設され、2002年1月23日より稼動を始めている。

概要

カミオカンデは、大統一理論の予言する陽子崩壊を実証するため1983年に完成した[2]

カミオカンデは3000トンの超純水を蓄えたタンクと、その壁面に設置した1000本の光電子増倍管からなる。ここで使用された光電子増倍管は研究グループと浜松ホトニクスが新規に共同開発した口径20インチのものである(一般に広く使われるのは口径2インチ型)。ガラスバルブには耐水性が高いHARIOの耐熱ガラス「ハリオ32」が使用された[3]

カミオカンデが地下に設けられたのは、陽子崩壊時に放出されるニュートリノ以外の粒子の影響を避けるためである。ニュートリノはものを貫通する能力が高く、他の物質と反応することなく簡単に地球を抜けていってしまう。しかし、まれに他の物質と衝突することがある。カミオカンデは、このまれに起こる衝突を検出することで間接的に陽子崩壊を実証することを目的とした。

カミオカンデはニュートリノの衝突を検出するため、超純水をつかう。カミオカンデの内部には超純水がためられており、ニュートリノが水の中の電子に衝突したあとに、高速で移動する電子より放出されるチェレンコフ光は青白く発光し、壁面に備え付けられた光電子増倍管で検出する。チェレンコフ光を検出した光電子増倍管がわかると、計算によりどの方角からきたニュートリノによる反応かがわかる仕組みになっている。

1987年2月23日、カミオカンデはこの仕組みによって、大マゼラン星雲でおきた超新星爆発 (SN 1987A) で生じたニュートリノを偶発的に世界で初めて検出した[4]。この功績により、2002年小柴昌俊は、ノーベル物理学賞を受賞した。

その後も、太陽ニュートリノニュートリノ振動の検出、レプトンフレーバーの保存の破れの研究に活用された。

当初の目的

前述したとおりカミオカンデ建設の当初の目的は、大統一理論の候補の多くが予想する陽子崩壊を観測することであった。中でも最もシンプルで有力であったSU(5)理論が正しければ、少なくとも年に数回の陽子崩壊検出が可能なように、さらには外国でも同様の実験が行われていたが、複数予想される崩壊形式の分岐比も測定可能なように設計された。

予想される崩壊の中で主なものは、陽電子パイ中間子(π0)への崩壊で、π0はすぐに2つの光子に崩壊し、光子はさらに電子等を散乱したりする。これらの陽電子や電子等の発するチェレンコフ光を観測することにより、陽子崩壊を検出しようとしたのである。

SU(5)理論では陽子の寿命は1030から1032年と予測されていたが、陽子崩壊は観測されず、陽子の寿命は1034年以上であることが分った[5]。これによりSU(5)理論は否定され、大統一理論に修正を迫ることになった。

修正理論でも寿命は長くなるものの陽子崩壊が予想されているが、実験を受け継いだスーパーカミオカンデにおいて2018年現在でも陽子崩壊は観測されておらず、陽子の寿命は少なくとも1.6×1034年以上であるとみられている[6]

脚注

  1. ^ 梶田 隆章「‹特別講演›神岡での基礎科学研究」『学術の動向』第22巻第7号、日本学術協力財団、2017年、93頁、doi:10.5363/tits.22.7_91 
  2. ^ カミオカンデと神岡鉱山”. スーパーカミオカンデと神岡鉱山. 三井金属鉱業. 2024年6月17日閲覧。
  3. ^ 20インチ光電子増倍管開発ストーリー:浜松ホトニクスについて - 浜松ホトニクス
  4. ^ K. Hirata, T. Kajita, M. Koshiba, M. Nakahata, Y. Oyama, N. Sato, A. Suzuki, M. Takita, Y. Totsuka, T. Kifune, T. Suda, K. Takahashi, T. Tanimori, K. Miyano, M. Yamada, E. W. Beier, L. R. Feldscher, S. B. Kim, A. K. Mann, F. M. Newcomer, R. Van, W. Zhang, and B. G. Cortez (1987-04-06). “Observation of a Neutrino Burst from the Supernova SN 1987a”. PHYSICAL REVIEW LETTERS 58: 1490. doi:10.1103/PhysRevLett.58.1490. 
  5. ^ 陽子崩壊 スーパーカミオカンデ 公式ホームページ
  6. ^ 【論文紹介】陽子崩壊の現象を探索した最新結果について論文を発表しました 2017年1月7日発表

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外部リンク


カミオカンデ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)

日本の発明・発見の一覧」の記事における「カミオカンデ」の解説

1987年超新星爆発生じたニュートリノ小柴昌俊らは偶発的に世界で初め検出した。この機器浜松ホトニクス新規に共同開発したものである。

※この「カミオカンデ」の解説は、「日本の発明・発見の一覧」の解説の一部です。
「カミオカンデ」を含む「日本の発明・発見の一覧」の記事については、「日本の発明・発見の一覧」の概要を参照ください。

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