シャンブル・サンディカル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 08:33 UTC 版)
「オートクチュール」の記事における「シャンブル・サンディカル」の解説
1868年にフランス・クチュール組合(フランス語: La Chambre Syndicale De La Confection Et De La Couture Pour Dames Et Fillettes)」が創設される。 20世紀初頭までパリには多くの高級仕立て店が乱立しており、「オートクチュール」の規格も曖昧であった。イギリスからやってきたデザイナーのシャルル・フレデリック・ウォルトがこれらの高級仕立て店をシャンブル・サンディカル(パリ・オートクチュール組合)として組織化した。 シャンブル・サンディカルの設立により、それまで顧客の一方的な注文や、ある程度の規格の中から顧客が好みのデザインを指定して作ったり、デザイナーが客の希望を聞きながらデザインする服作りが、デザイナーがデザインしたものを顧客の体に合わせて仕立てて売るという「デザイナー主導」になり、顧客にとって「デザインを買う」=「芸術作品を買う」ということになった。単なるオーダーとのこのような違いから、デザイナーの社会的地位も大いに高まった。 シャンブル・サンディカルは、コレクション後に大量に溢れるコピー品にも対応し、新聞や雑誌へ公開まで期限の条件をつけたり、取材するメディアが全ての店を取材できるようにコレクションのスケジュール化を行い、海外メディアへのアピールにも大いに貢献している。 組合加盟には様々な規定があり、それらをクリアしなければならない。例えば、1年に2度のコレクションを開催、コレクションでの発表数、アトリエの常駐スタッフの数、専属マネキンの人数などである。加盟店はメゾン(maison)と呼ばれ、生地の選定から縫製まで一貫して行う為のアトリエを持っている。しかし、急速に縮小しているオートクチュール産業・文化を維持し、新規のデザイナーやメゾンを招致するために、これらの規定は年々、緩やかになってきている。 製作過程では、コルセットなど特別の部分を除いては全て、お針子が一刺し一刺し手縫いをして完成させる。ミシンは使わない。刺繍もレースもみな手編みである。デザイナーはテキスタイルデザインも行なうことがある。完成までには2、3度の仮縫いをして、最後に本縫いということになる。刺繍などの部分的な加工は「ルサージュ」などの専門のアトリエに外注されることが多い。ルサージュも含め、靴、帽子、ボタン、金細工などを行うアトリエは元々、家内手工場のような小さな資本のアトリエであった。そこにオートクチュールビジネスの縮小・顧客の減少が拍車をかけ、経済的に非常に困難に陥っていたが、2000年代にそのほとんどのアトリエを「シャネル」のメゾンが買い取り、その傘下に置いた。それはシャネルという十分な資本を持ったメゾンが経済的に資本支援をすることを意味し、パリのオートクチュールという文化保存の意味になり、フランスでは高く評価された。また、装飾品、帽子や靴などのアクセサリーも専門のアトリエや外部のデザイナーが担当する。 オートクチュールは、最高の服飾素材を用いた熟練した職人の手仕事による最高級服であるため、非常に高価である。シンプルなスーツ一着は300万円程度からであり、美しいシルエットのレースやビーズ刺繍の装飾的なドレスなどはその金額をさらに上回る。そのため顧客はアラブの石油王や貴族、世界中の上流階級であるセレブリティーである。
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