サンデーサイレンス系種牡馬の活躍と血の飽和、偏りの問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 04:48 UTC 版)
「サンデーサイレンス」の記事における「サンデーサイレンス系種牡馬の活躍と血の飽和、偏りの問題」の解説
サンデーサイレンス直仔の種牡馬がデビューすると、日本のリーディングサイアー上位は彼らによって占められるようになった。サンデーサイレンス直仔の種牡馬の産駒は、中央競馬においてサンデーサイレンス産駒が優勝できなかったNHKマイルカップ、ジャパンカップダート、中山大障害を含む数々のGI級競走を優勝している。さらに日本国外でもシーザリオ(父スペシャルウィーク)がアメリカンオークスインビテーショナルステークスを、デルタブルース(父ダンスインザダーク)がメルボルンカップを勝ち、フジキセキ、タヤスツヨシ、バブルガムフェローといったシャトル種牡馬の産駒が南半球やドバイのG1を勝利している。 日本国外へ輸出された種牡馬を見ると、フランスに輸出されたディヴァインライトの産駒ナタゴラがチェヴァリーパークステークスを制してカルティエ賞最優秀2歳牝馬を受賞し、イギリスのクラシックレースである1000ギニーを制したほか、アメリカで種牡馬入りしたハットトリック産駒のダビルシム (Dabirsim)がモルニ賞とジャン・リュック・ラガルデール賞を制して、カルティエ賞最優秀2歳牡馬に選出されている。 サンデーサイレンス自身ばかりでなく、その直系の牡馬までもが種牡馬として活躍し数多くの種付けをこなすようになると、サンデーサイレンスの血を引く馬が過剰に生産され、それらの馬が種牡馬や繁殖牝馬となることで近親交配のリスクが高まり、やがては日本の競走馬生産が行き詰まりを見せるようになるのではないかという懸念が生じるようになった(血の飽和、偏りの問題)。2004年の秋華賞においては同一GI最多出走となる11頭のサンデーサイレンス産駒が出走し、ステイゴールド産駒のオルフェーヴルが優勝した2011年の日本ダービーでは、出走18頭すべてが「サンデーサイレンスの血を引いた馬」という事態も起こっている。 これに対し吉田照哉は、サラブレッドの生産においては一つの系統が栄えれば次に別の系統が栄えるということが繰り返されて来たのであり、サンデーサイレンスの場合もほかの系統が自然と栄えるようになる、加えてサンデーサイレンス系の馬を日本国外へ輸出するという対策方法もあると反論している。 吉沢譲治は、「地味な血統」ながら競走馬として活躍した本馬を「アメリカ版オグリキャップ」と評した。しかし、種牡馬としてのサンデーサイレンスについては「功の山を築く一方で、罪の山も残した」と述べており、この発言については経済面・興行面の2点の観点から以下のように供述している。 経済面においては、「サラブレッドの世界でこの手の革命的な種牡馬を持つことは、たいへんな利権を手にすることを意味する。革命の主が死んでも、その血の猛威は孫、ひ孫、さらにその先の代まで続く」としたうえで、結果的に封建時代のような格差社会を作り上げてしまうことになり、サンデーサイレンスが種牡馬・繁殖牝馬双方で活躍馬を送り出したことで種付け料は3000万円を超えるまでに高騰し、また産駒も億単位で取引されることが当たり前となったことでサンデーサイレンス産駒に大金を投じた人物たちが富を得る一方、その分金が落ちなくなって売れ残りが目立つようになった中小の牧場が次から次へと消えていき、繁殖牝馬を預ける馬主たちも次から次へと撤退していったことで、生産馬の競走能力と収入の格差は年を追うごとに酷くなっていったと述べている。 興行面においては、大レースを勝つのはサンデーサイレンス×良血牝馬の配合で生まれたエリート血統ばかりとなり、それらを取り巻くほとんどの生産者、馬主、調教師、騎手がランキング上位の者ばかりであるため、このごく一握りの者たちが持ち回りで大レースを勝つことが日常化していると述べている。続けて吉沢は「(日本の競馬は)小が大を制する、脇役が主役を食う、底辺から這い上がった馬が頂点をめざす、どんでん返しの展開、意外性といった波瀾万丈、立身出世のシナリオ展開があって発展してきた」とし、小さな牧場で生まれた地味な血統の馬が地方からはい上がって中央のエリートを打ち負かし、ひたむきに頂点を目指したハイセイコーやオグリキャップのような馬がかつてのヒーロー像だったとし、それがサンデーサイレンスが競馬界全体にもたらした血統の寡占と格差社会によってそのような要素が骨抜きにされてしまったため、これがファンの競馬離れと周辺メディアの停滞を招く一因になったことは否めないと述べている。
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