アーヴ語史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 06:43 UTC 版)
アーヴ語は(作品の出版された20世紀末から21世紀初頭の世界から見た)少々あるいは大幅な未来、地球の衛星軌道から、太陽系の惑星軌道への人類進出が相当進んだ頃、日本を出身とした者たちが住人のほぼ全てであった軌道都市トヨアシハラにおいて、(ちょっと常識的には考えにくいことであるが、何らかの原因により)過激な言語復古主義者による「純化」の行われた、かなりの人工言語的な性格のある自然言語で、一種独特な日本語系の「トヨアシハラ語」が、その直接の祖語である。彼らは、(当時の彼らの)日本語から漢語を主として外来語とそれにもとづく音韻を一切排し、基本的には上代日本語(いわゆる「やまとことば」)に基づいて、日本語を再構築した。しかし、彼らの現実に不可欠であった、各種の(おそらくは近代の前後に作られたものを主とする、いわゆる「和製漢語」を含む)漢語や外来語概念を表現する語が大量に足りないのも事実でもあり、その結果として、やまとことばへの直訳や、各種の語から「やまとことば的な語」を造語して補うことが行われた。 その後、軌道都市トヨアシハラから、系外探査のために送り出された原アーヴたちが用いていたトヨアシハラ語は、文字を与えられず、小人数で閉塞的な生活を営んでいたこともあり、アーヴがトヨアシハラを破壊した後、急激な短縮化現象によって大きく変容した。 その段階は、 母音の脱落、統合 同音異義語の発生を避けるため、残った母音が脱落したものに引きずられたことによる母音の増加 子音の発音部位の遷移、鼻音の非鼻音化などの変化 語幹の末尾音と格助詞の融合及びそれに伴う一部子音の発音変化 であった。 従って語彙はやまとことばにもとづくものなどもあるものの、音韻的にはやまとことばとも現代日本語とも大きく変化し、日本語の大きな特徴である開音節構造(/N/を除くほとんどの音節が母音で終わる)も変容している。以上のような音韻の変化は文法までも変化させ、形態的類型論で言うならば、屈折語の性格が強くなり、ほぼ純粋な膠着語とされる日本語とは、かなり異なった言語とさえ言える。 また一例を挙げるなら、主人公ジントの発音する「ラフィール」の「フ」は、(ジントの出身から)ほぼ間違いなく英語の f(下唇を軽く噛む)であるのだが、一般のアーヴの多くも外部(「地上世界」)出身者との接触などによりそのような発音の影響を受けており、(22世紀? 以前の)日本語を母語とする話者のような無声両唇摩擦音で発音するのは、貴族のうちでも皇族に近い者など、減ってきている(という設定がある)。 長期では多くの言語で見られる何らかの音韻の変化という現象ではあるけれども、実際にひとつの言語でこのような大きい変化が全て起きたとされる実例の研究はいまのところ無い。ただ、少なくともエジプト語においては膠着語-屈折語-孤立語循環説なども提唱されており(現代英語が屈折語からほとんど孤立語に近づきつつあるのもこの一例と理解される)、日本語からアーヴ語への文法構造の変化は決して荒唐無稽であるとはいえない。
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