アルカリ電解質形燃料電池
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/01 03:48 UTC 版)
アルカリ電解質形燃料電池 (AFC, Alkaline Fuel Cell) は、水酸化物イオンをイオン伝導体とし、アルカリ電解液を用いた燃料電池である。

4. 酸素 5. 陰極(カソード) 6. 電解質 7. 陽極(アノード) 8. 水
9. 水酸化物イオン
非常に優れた性能を持ちアポロ計画やスペースシャトルに活用されたが、空気中・燃料中の二酸化炭素で著しく劣化するため地上では実用化されていない[1]。
長所
- 常温で動作可能
- 効率が高い:固体高分子形燃料電池の2倍以上、70 %にも達する。
- 貴金属を使わない
短所
- 二酸化炭素で著しく劣化する
反応
- 正極(アノード):
- 負極(カソード):
固体高分子形燃料電池が水素イオン H+ を用いるのと異なり、水酸化物イオン OH− を用いるところが特徴。
電解質
電解質には水酸化カリウム (KOH) などのアルカリ溶液を用いる。これが二酸化炭素と反応してしまうことで劣化する。
これを解決する方法として電解液を定期的に交換する方法がある(流動形電解質)。交換機能を持たないものを静止形電解質という。
しかし、電解液の流路を確保するため大きく複雑になる他、負極の孔を塞ぐ炭酸塩を取り除くことは出来ない。
また炭酸塩は電極の防水層を徐々に劣化させ、構造劣化、電極の漏水を引き起こす。
他には、二酸化炭素を吸収しない固体電解質を用いる方法[2]、事前に水酸化カリウムなどと空気を接触させることで二酸化炭素を除去する方法が研究されている。
派生系
同じくアルカリ電解質を用いた燃料電池に直接水素化ホウ素燃料電池、直接水素化金属燃料電池がある。
脚注
- ^ 雅宣, 野村、貞弘, 波江、一清, 岡野、喬, 小林、和雄, 小関、秀明, 駒木「燃料電池の開発現状と技術課題」『日本舶用機関学会誌』第29巻第2号、1994年、155-169頁、doi:10.5988/jime1966.29.155。
- ^ “固体アルカリ燃料電池用電解質膜-高化学耐久性アニオン伝導高分子の設計開発 | 東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所”. www.res.titech.ac.jp. 2022年7月3日閲覧。
アルカリ電解質形燃料電池 (AFC)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 12:40 UTC 版)
「燃料電池」の記事における「アルカリ電解質形燃料電池 (AFC)」の解説
アルカリ電解質形燃料電池(AFC, Alkaline Fuel Cell)は、水酸化物イオンをイオン伝導体とし、アルカリ電解液を電極間のセパレータに含侵させてセルを構成している。PEFCと同様、高分子膜を用いるタイプも報告されている。最も構造が簡単であり、アルカリ雰囲気での使用であることから、ニッケル酸化物等の安価な電極触媒を利用することができること、常温にて液体電解質を用いることからセル構成も単純にできるため、信頼性が高く、宇宙用途などに実用化されている燃料電池である。一方、改質した炭化水素系燃料から水素を取り出す場合、炭化水素が混入しているとアルカリ性電解液が炭酸塩を生じて劣化する。同様に空気を酸化剤として用いると電解液が二酸化炭素を吸収して劣化するため、純度の高い酸素を酸化剤として用いる必要がある。水素の純度を高めるためには、パラジウムの膜を透過させることにより純度を高める。電解質が水溶液であるため、作動温度域は電解液が凍結・蒸発しない温度に制限される。また、温度によりイオンの移動度(拡散係数)が変わり、発電力に影響するため、温度条件が厳しい。ニッケル系触媒は配位性のある一酸化炭素、炭化水素、酸素および水蒸気等により活性が下がるので水素燃料の純度は重要である。これらを不純物として含む改質水素の使用は望ましくない。 21世紀現在の燃料電池の研究開発上ではほとんど目を向けられることはないが、年少向けの教材から、アポロ計画やスペースシャトルまで広く「実用化」されている。アポロ13号における事故はこの燃料電池に供給する液体酸素供給系統の不具合に起因したものであり、燃料電池そのものの問題ではない。 ダイハツ工業は産業技術総合研究所と共同で水加ヒドラジン(N2H4・H2O)を燃料として0.50W/cm2の出力密度を達成したと発表している。この場合、燃料電池への炭化水素の混入はなく、排出物は水と窒素のみとなる。
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