アメリカから日本へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:19 UTC 版)
2001年科学技術振興事業団戦略的創造研究推進事業(ERATO)「柳沢オーファン受容体プロジェクト」総括責任者に就任、お台場の日本科学未来館にラボを構え、日米を往復して研究を行う(2007年まで)。 2010年度からは、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され18億円の研究費を獲得、日本の母校筑波大学にラボを併設し、教授を兼任。さらに2012年、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、新設された筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構長に就任。 同時期に、ランダムに突然変異を入れた数千匹のマウスから睡眠・覚醒に異常のある個体を探索するという大規模なプロジェクトをスタートさせた。 睡眠覚醒のメカニズムについては未解明の部分が多いことから、仮説を立てずに表現型をスクリーニングする「フォワード・ジェネティクス」という手法を用いて探索研究を行う。ノンレム睡眠時間と睡眠要求が大幅に増加するスリーピー(Sleepy)変異家系と、レム睡眠が著しく減少するドリームレス(Dreamless)変異家系を樹立することに成功し、2016年にはスリーピーにSik3遺伝子変異を、ドリームレスに Nalcn遺伝子変異を報告した。この6年越しの研究により、睡眠・覚醒制御に重要な全く新しいメカニズムに迫る2つの遺伝子を見出した。 2018年1月、「オレキシンの発見と睡眠・覚醒に関する研究」で2017年度朝日賞を受賞。式典のスピーチでは「科学の仮説とは、しょせん人間が小さな頭脳で考えたストーリーにすぎません。目の前のデータがすべてで、自分の仮説をその上に置くことは許されないことなのです」と語った。 2018年6月13日、柳沢のチームの研究により、マウスの実験で脳内の80種類のタンパク質の働きが活性化することで眠気が誘発されることが発見されたとネイチャー電子版に発表された。柳沢らはタンパク質が睡眠を促すことで神経を休息させ、機能の回復につながるという見方を示し、睡眠障害の治療法開発につながる可能性を指摘した。
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