『ゲルマニア』
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著書『ゲルマニア』にて、ゲルマン地域のスエビ族について論じているローマの歴史家タキトゥスは、第38章から第40章において首族とされるセムノーネース族と好戦的なランゴバルド族のほか、スエビに属する支族が7つあると記している。それはレウディーグニー(Reudigni)、アウィオーネース(Aviones)、アングリーイー(Anglii)、ワリーニー(Varini)、エウドセース(Eudoses)、スアリーネース(Suarines)、ヌイトーネース(Nuitones)である。7つの部族は川や森林に囲まれており、タキトゥスによると、個別では特に記述に値するものはないが、彼らはみな女神ネルトゥスを崇拝している点で特に際立っており、その集団における女神崇拝の記録が残されている。その章の読解は次のとおり。 ラテン語: Contra Langobardos paucitas nobilitat: plurimis ac valentissimis nationibus cincti non per obsequium, sed proeliis ac periclitando tuti sunt. Reudigni deinde et Aviones et Anglii et Varini et Eudoses et Suardones et Nuithones fluminibus aut silvis muniuntur. Nec quicquam notabile in singulis, nisi quod in commune Nerthum, id est Terram matrem, colunt eamque intervenire rebus hominum, invehi populis arbitrantur. Est in insula Oceani castum nemus, dicatumque in eo vehiculum, veste contectum; attingere uni sacerdoti concessum. Is adesse penetrali deam intellegit vectamque bubus feminis multa cum veneratione prosequitur. Laeti tunc dies, festa loca, quaecumque adventu hospitioque dignatur. Non bella ineunt, non arma sumunt; clausum omne ferrum; pax et quies tunc tantum nota, tunc tantum amata, donec idem sacerdos satiatam conversatione mortalium deam templo reddat. Mox vehiculum et vestes et, si credere velis, numen ipsum secreto lacu abluitur. Servi ministrant, quos statim idem lacus haurit. Arcanus hinc terror sanctaque ignorantia, quid sit illud, quod tantum perituri vident. A・R・バーリー読解の訳: 対照的に、ランゴバルド族は数が少ないことで際立っている。 従順性ではなく戦いと大胆さによって自分達を守ってきた多くの屈強な民族に囲まれている。彼らの隣にはRuedigni、Aviones、Anglii、Varini、Eudoses、Suarines、Huitonesがいて、川と森林によって守られている。これら国家の個別について特に注目に値するものはないが、彼らは共通してネルトゥス、すなわち母なる大地、の崇拝が際立っており、彼女が人間関係に介入して彼らの民族じゅうを取り持ってくれると信じている。大洋の島には鎮守の森があり、そこには神官だけが触れてよい布で覆われた、神聖化された二輪の牛車がある。彼が最奥の聖廟 に女神の存在を感じ取り、大きな敬意を払って彼女の牛車に彼女をエスコートすると、それが牝牛によって牽引される。その時は歓喜の日々であり、彼女が訪問しておもてなしを受ける予定となっている場所はどこでも田舎はお祭りを祝う。誰も戦争に赴かず、武器を取りだす者もなく、鉄製のあらゆる物体が閉じ込められて、それから初めてその時に彼らは平和と平穏を経験する。女神が人間社会を満たしてしまい、神官が彼女を彼女の神殿に連れ戻すその時まで、彼らはそれらを称賛するのみである。その後、牛車と布と、もしそれを信じるのなら、神である彼女自身が秘密の湖で洗われる。 この任務を実行する奴隷は直ちに同じ湖に沈められる。死にゆく者達だけが見られるだろうものを彼らに知らさないようにしており、それゆえ恐ろしいほどの神秘さと敬虔さが起こるのである。 J・B・ライヴズ読解の訳: ランゴバルド族は、対照的に人数の少なさが際立っている。服従ではなく戦闘とその苦難の中に安全性を見いだす多くの屈強な民族によって彼らは丸く輪になっている。彼らの後に来るReudingi、Aviones、Anglii、Varini、Eudoses、Suarini、Nuitonesは川や森の城壁の背後にいる。これらの民族に関して個別で特に注目に値するものはないが、彼らは共通してネルトゥス、あるいは母なる大地への崇拝が際立っている。彼女は人間関係における自分自身に興味があり、彼らの民族間を取り持ってくれると彼らは信じている。大洋の島には聖域の森があり、森の中には神官だけが触れてよい布で覆われた、神聖化された荷車がある。彼女の荷車は出産経験のない若い雌牛によって牽引されるので、神官はこの最も神聖な場所に女神の存在を認識し、最も深い敬意を表して彼女に接する。それから歓喜の日々と祝宴が、彼女が訪問して楽しまれる予定の全ての場所で続く。誰も戦争に赴かず、誰も武器を取り出さない。鉄製のあらゆる物体が閉じ込められている。その時、その時だけは平和であり静穏が知られて愛される。彼女が人間の親交を満たしてしまい、神官が女神を再び寺院に戻すまでは。その後、荷車と布と、もしあなたがそれを信じるのなら、女神自身が人里離れた湖できれいに洗われる。この奉仕は直後に湖に沈められる奴隷によって実施される。したがって、神秘さが、死ぬ運命にある者達だけが見ることができる光景が何であるかを尋ねる恐怖と不本意な敬虔さをもたらしている。
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