「母からのエール」中止の反響
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「家族の絆シリーズ」の記事における「「母からのエール」中止の反響」の解説
「母からのエール」は、就職活動中の主人公をリアルに描いた力作と言われた。主人公を演じた岸井ゆきのは、製作スタッフが岸井の出演する演劇を観劇し、現実味のある演技力に驚愕して、「就職活動に苦悩する学生の姿を違和感なく演じることができる演技力」と考えられたことからの採用であり、放映後も「突出した演技力」「リアリティのある演技」との声もあった。 その一方で、折しも放映開始の2月は、現実社会においても就職活動が本格化する時期だったこともあり、就職活動の不採用を描いた本CMは「感動するが、心が痛む」「リアルすぎて見ているのがつらい」との声も上がった。インターネット上でも「就職活動中の学生をさらに落胆させる」「辛過ぎて泣ける」「暗くなる」などの意見が相次いだ。作中では、主人公が不採用に対して「全人格否定されているような気になる」という、実際の就職試験のみならず、リストラやパワハラ経験者にとっても強く響く台詞もあり、「当事者にとってはあまりにもリアルで、傷口に塩を塗り込むようなもの」との声もあった。同様の境遇の子を持つ者から「就活に苦労している子供の親にとっても、おそらくこのCMは不愉快」との声も上がった。東京ガスへも「心が痛む」などの声が数件、電話やメールで寄せられた。 本CMは2014年2月1日の放映開始後、1年間の放送予定であったが、2月22日放映を最後に、3週間で放映が中止された。『食彩の王国』の放送が毎週土曜日で、2月22日より後は別のCMに差し替えられたため、本CMの放映回数はわずか4回である。東京ガスの公式ウェブサイトに掲載されていたCM動画も、放映中止と共に削除された。その後のCMは前作「ばあちゃんの料理」に差替えられており、この影響で「ばあちゃんの料理」は、1年間の放映予定のところを約半年間延長され、異例の放映期間となった。 このことから広告業界では、「東京ガスの堅い体質もあり、東京ガス社内で『辛い思いをする視聴者が1人でもいるなら放送しない方が良い』『東京ガスの就職試験の受験者がどう思うか』などの意見があがって、放送を中止した」とも意見された。視聴者の間でも「クレームへの配慮による打ち切り」との噂が流れた。これに対して東京ガスの広報部は、批判的な意見が寄せられたこと、そうした声に配慮したことを肯定しながらも、放映中止の理由はそれだけではなく、「前作の『ばあちゃんの料理』が広告大賞の最優秀賞に内定したことで、お客様の反応を判断材料としつつ、総合的な判断から『ばあちゃんの料理』を再度放送することに変更した」と説明している。 この放送中止後、本CMは中止されたことで逆にTwitterなどで話題にのぼった。ウィズニュース編集部では、就職活動に限らず、人生には辛いことや苦しいことは多くあることから、「こうした一場面を丁寧に、リアルに描写するのもCMの面白さなのでは」と意見された。危機管理広報の専門家から「とりあえず中止をしたという判断は間違っていないが、CMの出し手として、少なくとも真意はどこにあったのかの説明はするべき」との声もあった。一般人によるYouTubeへの投稿動画は、視聴回数が200万回を超えた。「素晴らしい」「感動的。見て泣いてしまった」「現実的で家族の暖かさが伝わる。良い作品」「勇気がもらえます」「最高に素敵なCM。心が温かくなる」と評価する声、「なぜ打ち切りなのか」「批判の理由が謎」「なぜ中止なのか誰も分からない。いいCMですよ、ていうか悪いところありませんが」など、放送中止を疑問視する声も寄せられた。 2014年7月放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)でも、視聴者からトークのテーマを受け付ける「あなたが取り上げてほしいニュース」のコーナーで、本作が取り上げられた。ゲストの渡辺真理が「就活中の当事者たちは逆なでされた感じを受けるのではないか」と指摘する一方で、タレントの松本人志は放送中止を疑問視して、「何が文句があるのかまったくわからない」、フジテレビのアナウンサーの山﨑夕貴も「私なら頑張ろうと思う」とコメントした。主演の岸井ゆきの自身も、後の新聞紙上で「救いのあるCMだと思っていたので、あのときは少し驚きました」と語っていた。
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