「国法・国家」との合意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 21:40 UTC 版)
12. ソクラテスは、国家の言い分として「ソクラテスと我々との合意はその程度のものだったのか、国家の下すいかなる判決にも服すると誓ったのではなかったか」と問わせる。更に、「ソクラテスはいかなる苦情があって国家転覆を図るのか、我々の保護下で両親は結ばれ、おまえが生まれ、扶養・教育された中に不満があるのか」「おまえや祖先が我々の産み子・臣下として属することを否認できるのか」「おまえは我々と同等の権利を持っていると信じたり、我々がおまえに加えようとすることをおまえも我々に加え返す(報復する)権利があると思っているのか」「父親や主人(奴隷の場合)に対しても、同等の(報復)権利は無いのに、父母よりも祖先よりも尊ばれ、畏敬され、神聖で、神々・理性的人間たちによって最も尊重されているこの国家・国法・祖国に対しては、それがあるというのか」「人は祖国を敬い、父親に対するよりももっと素直に従い、また、なだめるべき」「祖国が命じるものは、殴打・投獄・戦場送致であれ、黙って忍従すべきであり、逃亡・退却や持ち場の放棄をせず、戦場においても法廷においても他のどこにおいても国家・祖国の命ずる通りに実行しなくてはならない、もしくは、真の法の要求に沿って考えを改めさせなくてはならない」「暴力を用いることは、父母に対しても罪悪だが、ましてや祖国に対してはなおさらではないか」等と語らせる。クリトンも、同意する。 13. ソクラテスは、続けて国法に語らせる、「我々は全てのアテナイ人に対し、一人前の市民となり、国家の実状や法律を観察した時に、意に適わないことがあれば、全財産を携えて好きな所に行けることを、宣言している、また実際、植民地や外国に移住・引越ししても、それを誰も妨げも禁止もしない」「したがって、アテナイに留まり続けている者は、我々の命令の一切を履行することを、その行為によって約束した者である」「したがって、我々に服従しない者は、1「生の賦与者たる我々に服従しない」、2「養育者たる我々に服従しない」、3「我々に何か間違った行いがあった時に、説得によってこれを改めさせない」という3つの不正を犯している」「我々は命令をただ提議するのみで、それを履行するか、非を悟らせるか、その二者択一はその者に委ねられているが、不正者はそのどちらも実行しない」 14. 「ソクラテスが今現在の企てを遂行するならば、こうした非難は最大限該当することになる」「ソクラテスは一度のイストモス行や、ペロポネソス戦争(ポティダイアの戦い、アンフィポリスの戦い、デリオンの戦い)への従軍といった例外を除いては、アテナイの町を出ることもなく、他国やその法律に興味を持たず、ここで子供ももうけ、この国家に満足してきたし、裁判中には、追放刑を提議することもできたが、それよりは死を選ぶと高言した」「それを今さら撤回し、契約・合意を破棄して逃亡を企て、最も無恥で奴隷的な振る舞いをしようとしている」「まずはこれまでの行為によって我々に従って市民生活することに同意したという主張が、正当であるか否か答えてみよ」。クリトンも、しぶしぶ同意。ソクラテスは続ける、「我々とソクラテスとの契約・合意は、強制されたものでも、欺かれたものでも、短時間で強いられたものでもない、ソクラテスは70年もの間、ラケダイモン(スパルタ)も、クレテも、その他のギリシア人や異邦人の都市をも選ばず、アテナイに留まり、この国・国法を好んできた」「これまでの合意を守らず、逃亡するならば、ソクラテスは自分を物笑いの種にすることになる」
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