《宜しくお願いします》の敬語
「宜しくお願いします」の敬語表現
「宜しく」とは、形容詞である「よろし」の連用形です。「許容できる」「差支えない」「程よく」などの意味がありますが、挨拶などでは、好意を伝える時や頼みごとをする時に添える語として使われます。「お願い」の「願い」はワ行五段活用の動詞「願う」の連用形、もしくは連用形が名詞化したものです。そこに、接頭辞である「お」がついていることによって「お願い」は「願い」の謙譲語・美化語となり、敬意を表現し語調を整えています。「します」は、「する」の丁寧語です。丁寧語は尊敬語や謙譲語と並んで敬語を構成する3要素のひとつです。つまり、「宜しくお願いします」は、自分以外の全員に対して敬意を表現している敬語表現となります。より丁寧に「宜しくお願いします」を表現する場合には「よろしくお願いいたします」を用います。「いたし」は「する」の謙譲語です。謙譲語は、誰にでも使える丁寧語よりも自分がへりくだり相手を立てる意味を持っています。そのため、「宜しくお願いします」よりも「よろしくお願いいたします」の方が相手に対してより敬意を示すことができる敬語表現です。
「宜しくお願いします」の敬語の最上級の表現
「宜しくお願いします」の敬語の最上級の表現は「よろしくお願い申し上げます」です。品詞分解すると「よろしく」「お」「願い」「申し上げ」「ます」の5つに分けられます。「よろしく」は、形容詞である「よろし」の連用形、「お」は接頭辞、「願い」は動詞「願う」の連用形で名詞化したもの、「申し上げ」は「言う」の謙譲語「申す」「申し上げる」の連用形、「ます」は丁寧語です。「宜しくお願いします」の丁寧な表現である「お願いいたします」と、最上級の表現である「お願い申し上げます」は、お願いを伝えるという意味では同じですが、詳しくみると「いたします」は「する」、「申し上げます」は「お願いを言う」という違いがあります。「お願いいたします」は、自分が相手に対してへりくだってお願いをするというところに焦点が当てられています。一方、「お願い申し上げます」は、自分が敬意を表したい相手に対して「直接お願いをするのはためらわれるけれども、お願いを伝えたい」という気持ちが込められた敬語表現になります。
「宜しくお願いします」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「宜しくお願いします」の敬語表現である「よろしくお願い申し上げます」と「よろしくお願いいたします」は、ビジネスメールや手紙の文末の締めとして使われることの多い表現です。使い分ける方法としては、お礼や挨拶、謝罪やお詫び、上司や目上の人へのメールや手紙などは「よろしくお願い申し上げます」を使い、連絡など何かを「する」ことをお願いする場合には「よろしくお願いいたします」を使うことが一般的です。「よろしくお願いいたします」では、「ご検討の程、よろしくお願いいたします」「何卒よろしくお願いいたします」「引き続きご愛顧のほど、よろしくお願いいたします」「後日改めて連絡いたします。何卒よろしくお願いいたします」「伺った際には、何卒よろしくお願いたします」また、自己紹介のシーンでは「〇課の△と申します。どうぞよろしくお願いいたします」などと使われます。
「よろしくお願い申し上げます」は、「本年もどうぞよろしくお願い申し上げます」「何卒、ご容赦いただきますようよろしくお願い申し上げます」「よろしくご査収のほどお願い申し上げます」などと使うことができます。
「宜しくお願いします」を上司に伝える際の敬語表現
上司に伝える際には、上司との関係性や状況に応じて「よろしくお願い申し上げます」と「よろしくお願いいたします」を使い分けましょう。「これからも、どうぞよろしくお願いいたします」「ご検討くださいますよう、よろしくお願いいたします」「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします」「お力添えのほど、何卒よろしくお願い申し上げます」「早急にご対応いただきますよう、よろしくお願い申し上げます」などと使えます。
「宜しくお願いします」の敬語での誤用表現・注意事項
「宜しく」という漢字表記は「よろしく」と読みますが、常用漢字表には「宜しく」という記載はなく「宜」は「ギ」という読み方しかありません。「宜」は、「適宜」や「便宜」という使い方をします。公用文では常用漢字表にない漢字は使うことができないため、ひらがな表記が正しいということになります。「致します」に関しても、「いたします」とひらがなで表記するのが正しい書き方です。「致す」は常用漢字表で「いたす」という読み方も記載されています。ただし、「致す」は動詞で「届くようにする」「至らせる」「よくない結果を引き起こす」などの意味があります。「よろしくお願いいたします」の「いたします」は、「する」の謙譲語に「ます」という丁寧語がついたもので、謙譲の気持ちを表す補助動詞です。補助動詞は、公用文ではひらがな表記を用いることが定められているため、「いたします」は、ひらがな表記ということになります。
「宜しくお願いします」の敬語での言い換え表現
「どうぞよろしくお願いいたします」「どうぞよろしくお願い申し上げます」
「何卒お願いしたく存じます」
「〜していただけますか」
「〜していただければ幸いです」
「〜していただけますと幸いです」
「〜していただけますと幸甚に存じます」
「懇願申し上げます」
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